コンタクトレンズと目のトラブル

角膜は表面から、角膜上皮、ボウマン膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮の5層でできています。角膜に傷がつくという場合、そのほとんどは角膜上皮の表層に傷がついたり、上皮細胞が脱落したりしているような状態を言います。症状がない場合もありますが、痛みや流涙などを訴えることもあります。

角膜に傷がついた場合の症状

角膜に傷がついても程度が軽ければ、数時間で治癒することがありますが、以下のような症状が現れることがあります。

  • 痛み: 角膜は体の中で最も多く知覚神経が分布しています。特に角膜の中央部は近く神経の分布密度が高いため、角膜の中央あたりに傷がつくと激しい痛みを感じることがあります。角膜下方にわずかな傷しかなければ痛みを感じにくいです。
  • 視力の低下: 傷が深い場合、視界がぼやけたり、霞んだりして視力が一時的に低下することがあります。
  • 光に対する過敏症: 明るい光がまぶしく感じられ、目をあけ開けるのが辛いような強い不快感を覚えることがあります。
  • 涙の増加: 傷がついた角膜を保護しようと、涙が過剰に分泌されることがあります。

角膜の傷によるリスクと合併症

角膜に傷がつくことで、以下のようなリスクが伴います。

  • 感染症: 傷を放置すると、細菌や真菌などが侵入しやすくなり、角膜感染症の原因になることがあります。
  • 角膜潰瘍: 感染症が進行すると、角膜潰瘍が発生し、視力に恒久的なダメージを与える可能性があります。
  • 瘢痕形成: 感染性の角膜潰瘍に進行してなんとか治癒できても、その過程で必ず角膜は瘢痕が形成されます。その結果、角膜の透明性が失われ、視力が永久に低下することがあります。

角膜に傷がついたときの対処法

角膜に傷がついた場合、まずは眼科を受診することが大切です。まず眼科医は、どんな状況で角膜にできたのかよく問診します。そして、角膜の所見から原因を考え、それに効く点眼薬や軟膏などを処方します。また、傷が深刻な場合は、眼帯や保護用眼鏡を使用して目を保護し、外部からの刺激を避けるよう指導することがあります。回復期間中は、コンタクトレンズの使用を控え、目をできるだけ休ませることが求められます。自己判断で治療を中断せず眼科医の指示に従うことが必要です。

角膜の傷を予防するために

角膜の傷を予防するためには、コンタクトレンズの適切なケアや装用時間の管理が重要です。また、目に異物が入ったときは目をこすらずに洗浄し、痛みが強く持続する場合は眼科を受診してください。また、目の乾燥を感じる場合には市販の点眼薬で対処するか、改善がない場合には眼科を受診してドライアイ点眼を処方してもらいましょう。角膜の傷は早期の治療で回復することが多いですが、放置すると視力に深刻な影響を及ぼすことがあります。目の健康を保つためには、日頃から予防し目の健康を守ることが大切です。

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監修 :東原尚代 先生(医学博士)

1999年に関西医科大学を卒業後、京都府立医科大学眼科学教室へ入局。バプテスト眼科クリニックや大学院でのドライアイ・角膜の研究を経たのち、2011年にひがしはら内科眼科クリニック副院長に就任。地域に寄りそった眼科診療と共に、京都府立医科大学でも円錐角膜・コンタクトレンズ専門外来や講師を務める。専門分野は、円錐角膜・ドライアイ・コンタクトレンズ。