コンタクトレンズの度数を自分で判断してはまずい?度数の考え方やリスクを解説

女性の目元

Point

  • コンタクトレンズの度数は検査で目の症状などを考慮して決定される
  • コンタクトレンズの度数を勝手に変えると様々なリスクが生じる
  • コンタクトレンズの度数を決める前に知っておいた方がいいポイントもある

目次

  1. コンタクトレンズの度数とは?
  2. コンタクトレンズの度数を決めるときに影響する目の症状
  3. コンタクトレンズの度数を勝手に上げるリスクとは?
  4. コンタクトレンズの度数を決める前に知っておくべきポイント
  5. まとめ

コンタクトレンズの度数とは?

コンタクトレンズのパッケージ

コンタクトレンズの度数は、視力を矯正する強さによって細かく分かれています。まずはコンタクトレンズの度数を示す数値や記号の読み方、度数を上げる効果やデメリットを説明します。

コンタクトレンズの度数に関する数値

コンタクトレンズの度数はD(ディオプター、ディオプトリ)という単位で表され、0.25D刻みで作られています(強い度数では0.5D刻みになることがあります)。数値が大きくなるほど、度数が強いという意味です。また近視用コンタクトレンズの度数は「-」で表され、遠視用は「+」です。乱視を矯正する度数は、(コンタクトレンズの場合)「-」で表されます。遠近両用コンタクトレンズの場合は、遠くを見るための度数と近くを見るための度数の差を加入度数といい、「+」の度数で表記されています。

コンタクトレンズの度数に関する記号

コンタクトレンズの度数に関する記号は、以下の通り、様々な種類があります。

  1. POWER・PWR・P(パワー)/SPH・S(スフェリック)
    コンタクトレンズが矯正する近視や遠視の度数を示す記号で、単位はDです。
  2. BC(ベースカーブ)
    コンタクトレンズの内側のカーブの大きさを示します。mm単位で表示されており、数値が小さいほどきついカーブで、大きいほど緩いカーブになります。コンタクトレンズを目に乗せた時の状態を決める要素の一つです。
  3. CYL・CY(シリンドリカルパワーまたはシリンダー値)
    乱視用コンタクトレンズが矯正する乱視の度数を示します。多くの場合、-0.75D、-1.25D、-1.75D、-2.25Dと0.50D刻みになっています。
  4. AXIS・AXS・AX(アクシス)
    乱視には方向(角度)があり、AXISは乱視の軸の角度を示します。乱視軸が180°付近の乱視を直乱視、90°付近の乱視を倒乱視、45°や135°付近の斜め方向の乱視を斜乱視と言います。斜乱視用のコンタクトレンズは需要が少ないため、種類も限られています。
  5. ADD(アディショナルパワー)
    遠近両用コンタクトレンズの加入度数を示す記号です。遠近両用コンタクトレンズは、遠くを見るための度数から近くを見るための度数が1枚のレンズに分布しており、その差を加入度数といいます。
  6. DIA(ダイアメーターまたはダイアミター)
    コンタクトレンズの直径を示す記号です。mm単位で表示されています。一般的に、ソフトコンタクトレンズの直径は14.0~14.5mmくらいです。

そのほかコンタクトレンズの中心厚を指すCT、使用期限を指すEXP、製造番号を指すLOTなども書かれています。

コンタクトレンズの度数とレンズの厚さ

コンタクトレンズの度数は、レンズの内側のカーブ(BC)と外側のカーブの違いによって起こります。近視用コンタクトレンズの場合は、度数が上がるにつれてレンズの周辺部が厚くなり、遠視用コンタクトレンズの場合は、レンズの中心部が厚くなります。

コンタクトレンズの度数を上げるとどうなる?

人は、外の景色や星などの遠くから、スマホや本などの近くまでピントを合わせて物を見ています。その見えている範囲が近すぎる目を近視、遠すぎる目を遠視といいます。コンタクトレンズを装用することで、見える範囲をちょうどよい状態(正視)に近づけています。目の状態に合ったコンタクトレンズを使用していれば、度数を上げても見え方が良くなるとは限りません。たとえば、もともとの目が近視でちょうどよい度数のコンタクトレンズを装用している場合、コンタクトレンズの度数を上げても遠くが見えやすくはならず、逆に近くが見えにくくなることがあります。

コンタクトレンズの度数を決めるときに影響する目の症状

コンタクトレンズを装着する様子

コンタクトレンズの度数を決める際、眼科では近視や遠視、乱視や老眼といった屈折異常の有無・程度を確かめる検査を行います。それぞれの具体的な症状を紹介します。

近視とは

近視とは、目の中に入ってきた光が網膜よりも前で焦点を結んでいる状態です。眼球の形状が通常よりも前後方向に長くなったり、水晶体や角膜の屈折力が強すぎたりすることが原因です。その結果、近視の目が見える範囲は近すぎるため、近くの物は良く見えるのに、遠くがぼやけてよく見えないという状態になります。

遠視とは

遠視とは、目の中に入ってきた光が網膜より後ろで焦点を結んでいる状態です。眼球の形状が通常よりも短くなったり、水晶体や角膜の屈折力が弱すぎたりすることが原因です。遠視の目は、見えている範囲が遠すぎるために、近くのものが見えにくくなります。遠視度数が弱ければ遠くは見えますが、遠視度数が強くなると遠方、近方とも見えにくくなります。中等度以上の遠視では近方だけでなく遠方も水晶体のピント調節で見る努力を強いられるため、目が疲れやすくなります。

乱視とは

乱視とは、目の中に入った光の焦点が1点に集まらない状態です。レンズの役割をする角膜や水晶体がゆがみ、方向によって屈折力に差が生じることにより起こります。乱視のある目は、見る距離によらず焦点が合わないために、常にぼやけていたりぶれて見えたりします。

老眼とは

老眼(眼科では老視といいます)とは、加齢によって水晶体が固くなり、目の焦点を合わせる機能(調節)が衰える状態です。一般的には40~50歳くらいから老眼の症状が出始め、徐々に進行します。近くのものを見ていると目が疲れやすくなったり、近くにピントが合いにくくなったりします。特に暗いところでは近くが見えにくくなります。

コンタクトレンズの度数を勝手に上げるリスクとは?

眼科での診察の様子

コンタクトレンズの度数は、近視、遠視、乱視の状態や生活環境などを考慮して、眼科で検査・処方されるものです。自己判断でコンタクトレンズの度数を上げると、逆に見えにくくなったり、目が疲れやすくなったりすることがあり、お勧めできません。見えにくいと感じたら、眼科に行って相談してみてください。

眼科に行かず、自己判断で度数を上げたりすると次のようなリスクがあります。

  • 目の病気を見逃してしまう可能性がある
  • 逆に見えにくくなったり、頭痛や目の疲れの原因になる場合がある
  • コンタクトレンズを無駄にしてしまう恐れがある

目の病気を見逃してしまう可能性がある

白内障やぶどう膜炎などの病気が原因で、目が見えにくくなっている場合があります。眼科で検査を受けると、気づかなかった目の病気を初期の段階で対処できるかもしれません。

逆に見えにくくなったり、頭痛や目の疲れの原因になる場合がある

自己判断で、コンタクトレンズの度数を上げすぎると、近くが見えにくくなったり、ピントを合わせるための筋肉が疲れてしまったり、眼精疲労の原因になったりすることがあります。逆に、近視用コンタクトレンズの度数を下げすぎた場合は、遠くが見えにくくなったりします。

コンタクトレンズを無駄にしてしまう恐れがある

開封済みのコンタクトレンズは、返品や交換ができないケースが一般的です。そのため、自分に合わない度数のコンタクトレンズを購入してしまうと、無駄な出費となるおそれがあります。

コンタクトレンズの度数を決める前に知っておくべきポイント

メガネとコンタクトレンズを手に持つ医師

コンタクトレンズの度数を決める前に、以下4つのポイントを理解しておきましょう。

  • メガネとコンタクトレンズの度数は異なる
  • 視力と度数は異なる
  • 眼科で適切な測定が大切
  • 度なしのカラーコンタクトレンズでも眼科の受診が必要

メガネとコンタクトレンズの度数は異なる

メガネは角膜(黒目の部分)とレンズの距離が離れていますが、コンタクトレンズは角膜に直接密着しています。そのため近視や遠視の度数が強い人は、メガネとコンタクトレンズの度数が異なります。メガネからコンタクトレンズに切り替えたりするときには、眼科で検査をして適切な度数を選んでもらう必要があります。

視力と度数は異なる

視力とは、物体の形や存在を認識する目の能力を数値化したものです。それに対して度数とは、レンズが光を収束させたり、散乱させたりする力(屈折力といいます)を数値化したものです。全く異なる基準の数値ですので、裸眼視力が○○だから、コンタクトレンズの度数が○○という関係は成り立ちません。

眼科で適切な測定が大切

コンタクトレンズの処方をするために眼科では屈折検査を行います。屈折検査には、機械を使って、近視・遠視・乱視などの屈折異常の度数を調べる「他覚的屈折検査」と、本人の見え方を基準に屈折異常の度数を調べる「自覚的屈折検査」の2種類があります。また、診察では目の病気や異常がないことを確認し、検査用コンタクトレンズを装用して見え方を細かくチェック・調整します。

自分に合う度数は、視力や目の状態、コンタクトレンズの種類など様々な要素によって変化します。これまで使っていたコンタクトレンズが見えにくいと感じたら、眼科での検査結果をもとに、度数を変えたほうが良いのか判断してもらいましょう。

度なしのカラーコンタクトレンズでも眼科の受診が必要

瞳の印象を変えるために度なしのカラーコンタクトレンズを購入するケースがあります。店舗やインターネットで気軽に購入できますが、自己判断で装用するのはリスクがともないますので、眼科で検査してもらい処方に基づいて購入するようにしましょう。

コンタクトレンズは度数に関わらず高度管理医療機器に指定されており、慎重に扱わなければなりません。もし自分に合わないものを選んでしまうと、目に負担がかかって視力が悪化したり、病気になったりする可能性があるため注意しましょう。

度なしのカラーコンタクトレンズ購入の際も、眼科を受診して最適なレンズの形状や素材、目の健康状態を把握しましょう。また購入後も、問題がないかチェックするため定期的に検査を受けることが大切です。

まとめ

笑顔の女性

今回は、コンタクトレンズの度数を自己判断で上げるリスクやポイントを解説しました。

コンタクトレンズを装用しても見えにくいと感じたら、まず、眼科を受診してください。見えにくさの原因がコンタクトレンズの度数にあるのか、目の病気や状態にあるのかの判断は眼科で検査しなければわかりません。自己判断で度数を変えても見え方が改善するとは限りません。コンタクトレンズは、高度管理医療機器に指定されています。眼科医の検査を定期的に受けながら、安全にコンタクトレンズをお使いください。

監修 :東原尚代 先生(医学博士)

1999年に関西医科大学を卒業後、京都府立医科大学眼科学教室へ入局。バプテスト眼科クリニックや大学院でのドライアイ・角膜の研究を経たのち、2011年にひがしはら内科眼科クリニック副院長に就任。地域に寄りそった眼科診療と共に、京都府立医科大学でも円錐角膜・コンタクトレンズ専門外来や講師を務める。専門分野は、円錐角膜・ドライアイ・コンタクトレンズ。

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