以前、豆知識で「近視は“良い目”です」とお話ししたことがあります。・・
「・・現代では遠くが良く見えるメリットより、近くが楽に見えるメリットの方が大きい・・例えば:受験勉強やパソコンなどの緻密な作業に集中できる、年を取っても老眼鏡なしで文字からの情報に不自由しない等・・有利なことが多いことから、遠視より近視の方が時代に即した“良い目”と言えますよ・・」と。 
・・このことは今でも正しいと考えています。

しかし、近視でも、ある程度強くなると日常生活に少し不自由が出てきますね。
では、どの程度が“丁度良い近視”なのでしょう?・・多分、メガネ、コンタクトなしの視力(裸眼視力)が0.3から0.8位であれば“理想的な近視”と言えます。もっとも、これよりやや強い近視(裸眼視力0.1前後)でも、メガネかコンタクトレンズを持っていれば特に問題ありません。

一方、“近視が進む、度数が強くなる”と言う話を聞きます。近視はなぜ進行するのか、予防することは可能なのか・・その答えの一部は分かっています。原因で一番多いのは、皆様ご存じのように・・①使用するレンズの度数が強すぎる、あるいはレンズで矯正した視力 が1.2以上の方でパソコンなどの近業を長時間行う場合等・・ですが、もう一つ、②強度近視の素質がある方の中に、中高年になるとかなり近視が進行する場合があります。今回お話ししたいのは、その中で特に矯正度数が10 D(ディオプター) 前後あるいはそれ以上になる方についての最新情報です。

近視は比較的アジア人に多いとされ、強度近視の原因は一般的に遺伝的、家系的なものとされています。年齢と共に強くなりますが、若いうち・・40代までは、矯正視力も正常で問題ありません。しかし、高齢になると眼底に変化・・眼軸(眼球の奥行き)の延長が起こり、裸眼では手の届く距離しか見えなくなります・・浮腫、出血などの網膜症が起こり易くなり、遠くも近くも視力が出ず、0.02以下になることもあります。そういう方は少し前までは、眼科に行くと“眼底以外はどこも悪くないのですが、視力を良くする方法はありません!”と言われていました。ある意味で、強度近視は失明の原因の一つでした。・・ところが最近、近視進行についての研究が、やっと見直され、新しい検査法が発達、治療法が開発され始めました!・・画像診断の発達、原因究明から得られた治療法も注射、投薬、手術と広がってきています。

ほぼ100年以上、この分野は全く手がつけられなかったことを考えると、感慨深いものがあります。幼児期から検査を受けた方が良い場合もあります・・かなり強い近視の素質、家系の方は・・“大学病院の眼科:近視の専門外来”をネット等で調べて、専門家の話を聞いてください。・・きっと参考になると思いますよ!

監修:医学博士 﨑元 卓(フシミ眼科クリニック)

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