CONTACT LENS NEWS
アメリカのオプトメトリストの間での近視進行抑制
アメリカでは、近視進行を遅らせるための処方をするドクターが増えてきています。Contact Lens Spectrumの6月号に、Dr. David Berntsenによるアメリカのオプトメトリストを調査した記事が掲載されました。近視進行抑制の処方を行っているドクターの間では、次の処方をしていました。
- マルチフォーカルソフトコンタクトレンズ 32%
- オルソケラトロジー 29%
- 二重焦点、多焦点眼鏡 26%
- ガス透過性ハードコンタクトレンズ 12%
- 0.01%アトロピン 1%以下
最も近視進行抑制の効果が高いとされる0.01%アトロピンよりも、効果が比較的低いということが研究でも示されている二重焦点眼鏡やハードコンタクトレンズの処方が多いということに、Dr. Berntsenは驚きました。
新しい過酸化水素消毒システム: クリアケアプラス
アルコンの過酸化水素ケアシステム、クリアケアを進化させた製品について発表しました。新しい消毒剤はクリアケアプラスという名称で、新しい湿潤剤が快適さを向上させ、高い消毒力を持ち、防腐剤フリーという特長を持っています。この製品は、Bausch & Lombが最近発売した過酸化水素消毒剤のPeroxiClearに対抗したものと思います。
世界特殊コンタクトレンズシンポジウム(Global Specialty Lens Symposium 2016)
次回の世界特殊コンタクトレンズシンポジウムは1月21~24日にラスベガスのシーザースパレスホテルで行われます。これはアメリカで最大規模のコンタクトレンズに関する学会です。
詳しくはこちら。
SCLERAL LENSES 1
強膜レンズ
ここ数年間のコンタクトレンズとオプトメトリーに関するホットトピックは強膜レンズです。私たちは、30年以上前にオプトメトリースクールで強膜レンズについて学びました。しかし、それはコンタクトレンズの歴史に関する講義の中でのことで、実際の処方について学んだ人はほとんどいませんでした。強膜レンズはオリンピックの水泳選手やダイバーに時折処方されることはありましたが、極度の低酸素になるために短時間の装用しか出来ませんでした。現在でも、アメリカのドクターのごく一部しか強膜レンズを処方した事がある人はいませんが、処方について学ぶ人は増えています。高酸素透過性素材の開発や新しい製造方法の出現によって、強膜レンズは有効な選択肢となってきています。事実、強膜レンズには他のハードコンタクトレンズやソフトコンタクトレンズよりも優れた点があります。
- より快適な装用感
- 大きく、安定したオプチカルゾーン
- 角膜の保護
この記事では、Dr. Eef van der Worpの著書「A Guide to Scleral Lens Fitting」を基にして強膜レンズの基本的な原理について説明します。Dr. Worpはオランダのマーストリヒト大学の研究者です。この本は、各国語に翻訳されたものがパシフィック大学を通じて無料でダウンロードできます。日本語もあります。
強膜レンズの特徴
強膜レンズは、通常のコンタクトレンズを装用できない患者にとって問題を解決してくれるコンタクトレンズです。通常のコンタクトレンズを装用できない原因としては
- 不正な変形: 円錐角膜、ペルーシド角膜辺縁変性、屈折矯正術後、角膜移植後、角膜損傷など。
- 強度の屈折異常: 強度乱視、無水晶体眼など。強膜レンズは角膜上での安定性が高いです。通常のハードコンタクトレンズやソフトコンタクトレンズよりも回転しにくく、センターリングも良好です。
- ドライアイ: 重症のドライアイでは、ハードコンタクトレンズもソフトコンタクトレンズも装用が非常に困難になります。コンタクトレンズを装用していなくても、眼表面が曝されているために眼表面に障害が起こります。強膜レンズを装用すると、角膜上に涙液の層が出来て、角膜を乾燥から守ります。
- 眼瞼外反や睫毛乱生症などから眼表面の保護
- 老視: 同心円タイプの同時視型遠近両用強膜レンズを老視患者に処方するドクターもいます。中央が遠用度数のタイプと近用度数のタイプの両方があります。
強膜レンズは水泳やサーフィンなどのアクティブな水中のスポーツをする人や、埃っぽい場所で作業をする人にも向いています。
強膜レンズのタイプ
強膜レンズは角膜をアーチ状に覆うように設計されていて、眼には強膜部分で接しています。したがって、角膜ではなく、強膜に荷重がかかっていて、角膜の保護にも役立っています。2013年に強膜レンズ教育協会は表1に示すようにコンタクトレンズのタイプによる名称を決めました。レンズを装用したときにレンズの荷重がかかる眼の部分によってレンズタイプを分類しています。強角膜レンズと(完全な)強膜レンズは両方とも強膜レンズとして考えられています。レンズの荷重の少なくとも一部が強膜にかかっているからです。(完全な)強膜レンズはミニ強膜レンズとラージ強膜レンズに分かれます。この2つのデザインと処方方法は若干異なります。
強膜レンズの各部位
強膜レンズはすべて3つのゾーンで構成されていて、強膜レンズ特有の処方目的を達成できるように設計されています。
- オプティックゾーン(光学部)
- トランジションゾーン(移行部)
- ランディングゾーン(接眼部)
オプティックゾーンはレンズ中央にあり、オプティックゾーンに度数が入っています。強膜レンズのオプティックゾーンの後面は角膜と平行になっていて、角膜との間に200~300μmの隙間が出来ます。強角膜レンズの場合には、レンズの中央部が軽く角膜に接しています。レンズ後面と角膜の間に隙間は涙液で満たされますので、クッションの役割をして、角膜を保護して快適な装用感を実現します。強膜レンズと角膜の間にある涙液の層はハードコンタクトレンズのように涙液レンズとして働きますので、角膜乱視、不正乱視、高次収差などを矯正するのに役立ちます。これは球面ソフトコンタクトレンズにはないメリットですし、乱視用トーリックソフトコンタクトレンズでも不正乱視や高次収差には対応できません。
強膜レンズはオプティックゾーンが通常のハードコンタクトレンズよりも大きいので、良好で安定した視力が提供できます。瞳孔が広がった場合でも瞳孔を完全に覆うことができることも一因です。強膜レンズはソフトコンタクトレンズの快適さとハードコンタクトレンズの優れた光学特性を併せ持っているのです。また、必要に応じて球面レンズだけでなく、トーリックやマルチフォーカルも作ることができます。
トランジションゾーンは、レンズ中央のオプティックゾーンと周辺のランディングゾーンをつなぐ移行部です。ここは一般的に眼表面と平行になるようにデザインされています。強膜レンズは角膜上にできる隙間を変更することでフィッティング調整するように設計されています。これはトランジションゾーンの幅を調整することで行います。
ランディングゾーンは、強膜レンズが強膜に接触する部分でレンズを保持します。ランディングゾーンは強膜の形に完全に一致してどの部分でも同じ圧力を強膜に掛ける事が理想です。ほとんどの強膜レンズは回転対象ですが、直径の大きな強膜レンズでは、強膜とのフィッティングを改善するためにランディングゾーンを後面トーリックにする必要があります。この場合、レンズ周辺部は非対称になります。最近の研究によると、鼻側の強膜のほうが耳側よりもフラットな形状をしていることが示されています。先進的な強膜レンズのランディングゾーンは耳側、鼻側、上側、下側で異なるデザインをしているものもあります。
強膜レンズのフィッティング
強膜レンズは通常のハードコンタクトレンズやソフトコンタクトレンズのようにフィッティングすることは出来ません。多くのドクターはトライアルレンズを使用して、メーカーが出しているフィッティングガイドの方法に従って処方しています。強膜レンズのメーカーは処方での相談に答えるように電話窓口を設置しています。
来月号では、強膜レンズの処方についても追う少し説明します。
BASIC CLINICAL TECHNIQUE – CONFRONTATION FIELDS SCREENING
視野スクリーニング検査
2014年の10月号の中で、眼の詳細なの検査の最初の行われる予備検査についてお話しし、その次の月からより詳しい説明をしました。
- 視力検査 (2014年11月)
- カバーテスト (2014年12月、2015年1月、2015年2月、2015年3月)
- ヒルシュベルグ法とラムダ角検査 (2015年4月、2015年5月)
- ステレオ検査 (2015年6月)
今月は別の予備検査についてお話しようと思います。視野スクリーニング検査です。
この検査の目的は、患者の8方向の視野の範囲を大雑把に測定することです。視野スクリーニング検査は他の予備検査同様、眼の検査を行う前に毎回行うように学生には教えています。視力検査は中心部の視覚のみを評価しますので、良好な視力が出ている場合でも、周辺部に視力の低下が見られる可能性があります。
- 網膜剥離
- 視覚路に影響している脳腫瘍
- 進行した緑内障
これは大雑把な検査ですので、周辺視野に影響する大きくて進行した障害を見つけることしか出来ません。また、正式な視野検査の代わりになるものでもありません。しかし、検査自体が早くて簡単に出来る上、視力検査では見つけられない視野欠損などを見つけられます。全ての患者にこの検査をすることをお勧めします。
検査手順
検査は次の方法で行うように学生に教えています。
- 患者に強度の屈折異常がなければ、検査のときに眼鏡を装用させる必要はありません。
- 検査する人は、患者から1mの距離に患者と向き合って座り、眼の高さを同じにします。
- 患者に左眼を隠すように指示します。そして、検査員の左眼を隠していない方の眼で見るように指示します。
- 検査員と患者の間に視標になるものを持ち、垂直方向に動かします。私は、視標として直径約10mmのボールを棒に付けたものを使用しています。垂直方向に簡単に動かせるものであれば、何でも構いません。
- 患者に検査員の眼を固視させながら、視標を周りから動かし、患者が見る事ができる場所まで徐々に中央に近づけていきます。視標が視野に入ってきて見えた場所の角距離を観察します。
- 次の8箇所で検査を行います(図1)。
- 耳側:水平経線よりも若干上と下の位置から。
- 上側:垂直経線よりも若干左と右にずらした位置から。
- 鼻側:水平経線よりも若干上と下の位置から。
- 下側:垂直経線よりも若干左と右にずらした位置から。
- 検査を通じて、患者の目線が真っ直ぐに視標を見ていて、よそ見していないことを確認します。
- 正常な場合、視野は図2に示した程度に広がります。耳側の視野が最も広く、他は少し狭いです。患者の検査をしてこれらよりも視野が狭かったら、より正確な検査で視野を測定する必要があります。
- 反対の目でも同じことを行います。
今回紹介したのはアメリカでよく行われている簡単な視野のスクリーニング検査です。他にも色々な検査があります。たとえば、指を患者の視野の周辺にもって行き、患者に指が何本に見えるかを聞いたりするドクターもいます。これは非常に大雑把な検査ですので、視野欠損の50%程度しか見つける事が出来ません。簡単なスクリーニング検査をして、視野欠損を見落とすような事があるとしても、何もしないよりは良いと思います。事故現場や寝たきりの患者の場合など、良い検査環境でないときでも、今回の方法のように視野の簡単な検査であっても行うことができます。
(翻訳: 小淵輝明)