世界のコンタクトレンズ処方状況 2014

Volume 9, No. 2

FEATURE ARTICLE – CONTACT LENS TRENDS IN 2014

毎年、Contact Lens Spectrum はアメリカにおけるコンタクトレンズとコンタクトレンズケアに関する調査を行っていて、その結果を毎年1 月号に掲載しています。2014 年にはアメリカ中の572 名のドクターを対象に調査を行いました。また、記事にはその他の情報も含まれています。今月のニュースレターでは、最初にアメリカの調査データが紹介された記事のまとめを書き、その後に世界中の国々のコンタクトレンズ処方についての記事をまとめます。

アメリカのコンタクトレンズ処方 2014 年
Contact Lens Spectrumによると、アメリカのコンタクトレンズ人口は3920万人で人口全体の約12%とのことです。そのうち女性が65.7%、男性が34.3%です。2014年にアメリカと世界のコンタクトレンズ市場は、昨年よりも約5%の成長が見られました。大手4社(Johnson & Johnson、Alcon、CooperVision、Bausch + Lomb)の市場におけるシェアについては書かれていませんでしたが、2013年のデータと変わっていないとは書かれていました。この調査の回答者の多くはオプトメトリストです(89%)。ドクターは1週間に平均117名の患者を診て、そのうち24名にコンタクトレンズを処方していました。彼らの利益の30%はコンタクトレンズによるものです。

  • 2014 年にAlcon が使い捨てのシリコーンハイドロゲルカラーレンズを導入したことによって、アメリカでもカラーレンズの処方が増えるかもしれません。カラーレンズはアジアでは人気がありますが、アメリカでは、処方全体の1%に過ぎません。
  • アメリカのオプトメトリストの約24%は、小児の近視進行抑制のためのコンタクトレンズの処方経験がありますが、今後増えていく可能性はあります。近視進行抑制に対する処方では、半数がマルチフォーカルレンズを使い、残りの半数がオルソケラトロジーを使っていました。少数ですがガス透過性ハードコンタクトレンズを使っている例もあります。
  • 2014年の大きな出来事のひとつに、CooperVisionによるSauflonの買収が挙げられます。このことによって、CooperVisionはシリコーンハイドロゲルの1日使い捨てレンズ、Claritiを扱うことができるようになりました。Claritiのシリーズは単焦点レンズのほかに乱視用トーリックレンズ、遠近両用のマルチフォーカルレンズもあります。

図1~6にアメリカのコンタクトレンズ処方に関するデータをまとめます。各図に簡単な説明をつけてあります。

図1.年齢層別のコンタクトレンズ処方割合
半数近くが18~34歳への処方でした。年齢が高くなると処方割合は減少してきますが、全体の1/4以上が45歳以上であり、老眼年齢です。数年で着実に増加していくでしょう。

図2.レンズ素材別のコンタクトレンズ処方割合
全体の90%以上がソフトコンタクトレンズで、そのほとんどがシリコーンハイドロゲル素材です。市場の約70%で安定しているように見えます。

図3.用途別のソフトコンタクトレンズ処方割合
全体の60%は単焦点レンズですが、トーリックやマルチフォーカルレンズもそれぞれ25%、12%となっています。

図4.老眼へのコンタクトレンズ処方
アメリカでは、老眼へのコンタクトレンズ処方の中でマルチフォーカルコンタクトレンズが確固たる地位を築いています。

図5.レンズ交換期間別のソフトコンタクトレンズ処方割合
アメリカでは1ヶ月交換を勧めることが多いです。1週間や2週間交換のレンズよりもコンプライアンスが良くなると考えられているからです。今後は1日使い捨てレンズの処方が増えていくことが期待されます。

図6.ソフトコンタクトレンズの消毒方法の割合
マルチパーパスソリューションと過酸化水素消毒が3:1の割合になっています。

世界のコンタクトレンズ処方傾向 2014年
毎年、Contact Lens Spectrumは世界中のコンタクトレンズ処方傾向を調査して、結果を1月号に掲載しています。昨年、50カ国の285,000人のコンタクトレンズ処方者に調査票を送付し、調査票が届いてからの患者情報を記録するように依頼しました。その結果、32カ国から25,179名分のコンタクトレンズ処方記録が届きました。表1に国ごとの調査票回収数を示し、図7~14に調査の結果をまとめます。

図7.コンタクトレンズ装用者の女性の割合
スペイン以外の国では女性が過半数でした。

図8.日本、アメリカ、全ての国におけるコンタクトレンズの処方割合
日本はアメリカと比較して1日使い捨てレンズの割合が高くアメリカは日本に比べてシリコーンハイドロゲルの割合が高いことがわかります。

図9. 2000年から2014年までの乱視用トーリックレンズの割合の変化
グラフの6カ国には、オーストラリア、カナダ、オランダ、ノルウェイ、イギリス、アメリカが含まれます。
日本は、この6各国と比較してトーリックレンズの処方割合が非常に低いことがわかります。

図10. 新規患者のうち、ソフトコンタクトレンズを処方された割合

図11. 日本、アメリカ、全ての国におけるソフトコンタクトレンズのタイプ別処方割合
図9に示したとおり、日本ではトーリックレンズの処方割合が低いことがわかります。

図12. 日本、アメリカ、全ての国のソフトコンタクトレンズ交換期間の割合
日本では1日使い捨てレンズの割合が非常に高いことがわかります。
また、アメリカや他の国では大きい割合を占める1ヶ月交換レンズが日本ではほとんど処方されていません。

図13. ソフトコンタクトレンズの消毒にマルチパーパスソリューション(MPS)を使用している人の割合
MPS以外を使っている人は過酸化水素で消毒していると考えられます。

図14. 45歳以上のSCL装用者におけるマルチフォーカルレンズ(MF)あるいはモノビジョン(MV)の処方割合
日本やアメリカでは最新のコンタクトレンズ技術を用いたマルチフォーカルレンズの処方がまだ少ないことがわかります。マルチフォーカルレンズはフランス、オーストリア、インドなどで多く処方されています。

BASIC CLINICAL TECHNIQUES

遮閉試験・カバーテスト(その3、角度の測定)
先月までのニュースレターで遮閉試験について説明しました。遮閉試験は斜視と斜位の2つの眼位異常を見つけ出す簡単で有意義な検査です。遮閉試験には2種類あります。

  • 片眼遮閉試験。これは斜視を診断するためのものです。(2014年12月号
  • 交代遮閉試験。これは斜視がない患者に斜位の診断をするためのものです。(2015年1月号

では、ここで2つの眼位異常について復習しておきましょう。

  • 斜視は両眼視を妨げるほどの大きな眼位異常です。両眼を開けているとき、斜視のある目は目線が逸れてしまいます。脳はその目から来る画像を抑制し、良いほうの目だけで見ていることになります。しかし、良いほうの目を遮閉したとき、斜視のほうの目で見るようになりますので、ずれていた眼位が戻り、まっすぐ前を向きます。これは遮閉試験で観察する目の動きです。
  • 斜位であれば両眼視が出来ます。両眼が開いていれば、両眼を使ってみることができ、脳は2つの目から来る2つの画像を融合させ、1つのものと認識します。しかし、一方の目を遮蔽して両眼視を阻害すると、遮蔽したほうの目の位置がずれます。次に他方の目を遮閉すると、最初に遮蔽したほうの目がまっすぐ前を向き、他方の目の向きがずれます。これが交代遮閉試験で観察できる目の動きです。

眼位異常の方向の診断
斜視あるいは位の診断をしたなら、どの方向にずれているのかを判断する必要があります。交代遮閉試験は斜視と斜位の両方に対して、どの方向にずれているのかを確認する良い方法です。診断するためには、遮閉をはずしたときに目がどちらの方向に動くのかを観察すればよいのです。仮に右眼に内斜視があるとします。右眼を遮蔽して、次に左眼を遮閉したときに右眼は内側にずれた状態からまっすぐ前を向くように動きます。遮蔽した眼を右から左に変えたとき、右眼が内側から外側に向かって動くことを観察するのです。

眼は、遮閉をはずされるときにずれた状態から戻ります。
したがって、眼が内側から外側に動けば、内斜視、外側から内側に動けば外斜視ということになります。

斜位にも同じ原理が当てはまります。内斜位の例を考えてみましょう。右眼を遮閉したとき、右眼は安静位、つまり内側を向きます。遮閉板を左に移動すると、右眼は安静位から正面に戻ります。つまり、右眼が内側から外側に向きが変わるのを観察することになります。外斜位の場合には、外側から正面に向きが変わります。つまり、遮閉をはずしたときに外側から内側に動くことを観察することになるのです。斜位では、遮閉をはずしたときの眼の動きは左右眼で対照的で同等です。つまり、外斜位であれば、右眼も左眼も遮閉をはずしたときに外側から内側に向かって動き、内斜位では反対のことが観察されます。

眼位のずれを測定する方法
斜視や斜位の診断をしたら、眼位のずれ量を測定する必要があります。経験豊かなドクターであれば、眼の動きを観察するだけで眼位のずれを正確に測定することができます。そうでない場合には、プリズムを使用することで想定ができます。外斜視や外斜位のように外に眼位がずれている場合、眼の前に小さなプリズムパワーのプリズムをベースイン(BI)で固定して、交代遮閉試験をしてください(図15)。遮閉をはずしたときの眼の動きが観察されなくなるまでプリズム量を調整して下さい。もし、プリズム量を大きくしすぎてしまった場合、眼は反対に動くようになります。交代遮閉試験で眼の動きがなくなるプリズム量が眼位のずれです。

内斜視や内斜位の場合でも同じ原理で測定ができます。プリズムの向きをベースアウト(BO)にして交代遮閉試験を行います。遮閉をはずしたときの眼の動きが観察されなくなるまでプリズム量を調整したら、それが眼位のずれです。

図15.斜視や斜位の眼位のずれ量を測定するには、プリズムを眼の前に固定して、交代遮閉試験を行います。眼位が外にずれている場合にはBIに、内側にずれている場合はBOにして遮閉をはずしたときの眼の動きが観察されなくなるまでプリズム量を調整します。

来月のニュースレターでは、遮閉試験についてさらに詳しい解説をします。

(翻訳: 小淵輝明)

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