Dr Salmon News Article Top Image

CONTACT LENS & HEALTH NEWS

AlconがGoogleのスマートコンタクトレンズ開発に参加
7月15日のNovartisのプレスリリースによりますと、AlconがGoogleと共同でスマートコンタクトレンズの開発を行うとのことです。Googleのスマートコンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズに小型の電子機器を埋め込んだものです。1年以上前、Googleは糖尿病患者の涙液中のブドウ糖を監視できるコンタクトレンズを開発する計画があることを発表しました。ソフトコンタクトレンズの周辺部に埋め込まれた小型電子機器のセンサーがブドウ糖レベルを測定し、そのデータをアンテナから離れた装置に送ることが出来るというものです。Googleは革新的な電子機器に関する技術を持っているのですが、眼の研究に関する専門的な知識を必要としていました。スマートコンタクトレンズの技術は目の健康の他の分野にも応用できるでしょう。擬似的に調節を行い自動で焦点を合わせるコンタクトレンズや眼内レンズの開発なども1つのアイディアでしょう。

シリコーンハイドロゲル カラーコンタクトレンズ
Alconは、アメリカでシリコーンハイドロゲル素材のカラーコンタクトレンズ、AIR OPTICS COLORSを発売することを6月に発表しました。従来素材のカラーコンタクトレンズは数年前からありますが、シリコーンハイドロゲル素材のカラーコンタクトレンズはアメリカでも最初になります。酸素透過性は格段に向上しますので、理論的には安全性が高くなることが期待されます。このレンズは1ヶ月交換の終日装用で使用します。医師の処方なしで購入されるカラーコンタクトレンズが日本をはじめアジア各国で深刻な問題になりつつあります。先月の日本コンタクトレンズ学会でも大きな問題として取り上げられていました。(先月のニュースレターを参照ください)

先進諸国の栄養失調
AMOのウェブサイトに興味深い記事が載りました。タイトルは、「栄養失調は誰にでも起こる」です。日本やアメリカなどの先進国に住んでいる人は、自分の国に栄養失調など存在しないと考えていると思います。栄養失調は貧しい発展途上国のものと考えがちです。しかし、食べ物が豊富で簡単に手に入る先進国であっても、栄養失調になる人もいます。特に年配の方はそのリスクも大きくなります。栄養失調や栄養不良は次に挙げるような生活の質(QOL)を低下させる副作用をもたらします。

  • エネルギーとモチベーションの低減
  • 精神的敏捷性の低下
  • 過度な眠気
  • 強さの低下(事故や転倒などを引き起こします)
  • 病気に対する免疫や抵抗力の低下
  • 病気や手術からの回復が遅い

私自身も私の家族のかなに栄養失調を経験しました。93歳になる私の父はこの2年間で大幅に体重を減らしました。この体重減少の原因の一部が栄養失調だったのではないかと考えています。アメリカや日本のような先進国でさえ、老人に起こる栄養失調を見落としてしまいます。これにはいくつかの理由が考えられます。

  • 老人は栄養失調以外にも体重を減少させる原因になりうる健康上の問題を持っています。そのような健康問題を考慮に入れすぎると、栄養失調の可能性を忘れてしまいます。
  • 痩せていく老人を多く見ているので、老人は痩せていくのが普通だと考えてしまう。
  • 老人は食欲がないこともしばしばありますので、老人が食べたがらないときに十分に食べたのだと考えてしまう。
  • 老人が一人で暮らしているか、年老いた配偶者と暮らしている場合、誰も老人の食べる量が少ないことに気づきません。もし、成人した子供が一緒に暮らしていたとしても、日々の生活が忙しかったりして、気づかないこともあります。
  • 我々自身が栄養失調など我々の国に存在するはずがないと考えていることも要因の一つかもしれません。

私の父の摂取カロリーを計算したところ、父は基本的に断食に近い食生活を送っていたことがわかりました。1日わずか600kcalしかとっていない日もありました。米国農務省は、老人の男性の場合で最低1日2000kcalを摂取するように勧めています。私たちは、父の栄養状態を改善するために次のステップで行うと決めました。

  • 1日に3食の通常の食事より、少しずつの量で6回の食事にする。
  • 消化のよい食品を取り入れる。
  • 徐々に食べる量を増やす。
  • 父が好きな食べ物を見つけるように努める。
  • 高カロリーの液体サプリメントを用いれば簡単なのかもしれませんが、できるだけ普通の食べ物を食べさせる。
  • 父の摂取カロリーを管理し、毎日の目標を決める。最初の目標は1日1200kcalとしました。多くの食べ物のカロリーはインターネットで検索することができます。また、iPhoneやiPadなどのモバイル機器用のアプリもたくさん出ています。

日本は世界でも有数の長寿国で、高齢者の割合も年々増加しています。老人の栄養失調などは日本でも取り組んでいくべき問題であると思います。

MYOPIA RESEARCH - ANIMAL STUDIES

近視に関する研究 – 動物実験 –
2010年、American Academy of Optometry (AAO)は、Dr. Earl SmithにCharles F プレンティスメダルを授与しました。これはAAOが贈る学術賞の中でも最も価値のあるものです。Dr. Smithはヒューストン大学オプトメトリ学校の学長であり、長年にわたる近視の研究で著名な先生です。その受賞式典でDr. Smithは近視進行に対する最新の動物実験に関しての講演を行いました。その講演の内容はOptometry and Vision Science の2011年9月号に掲載されています。

 

はじめに
近視は健康に関する重大な問題であり、特にアジアの諸国では、近年急速に増加してきています。これまで近視進行を抑制すると考えられてきた方法、たとえば「近視の低矯正」などの方法は効果がないとされていますし、「近視の低矯正」は逆に近視を進行させてしまうのではないかと言う研究結果もあるようです。
近視抑制に対するアプローチは意見が一致してきています。図1にまとめます。図1aは、低矯正の近視眼です。網膜中心部では網膜よりも手前で焦点を結び、網膜周辺部では網膜よりも後方で焦点を結びます。図1bは、眼鏡やコンタクトレンズで適切に矯正した眼です。網膜中心部では網膜上に焦点がありますが、網膜周辺部では網膜よりも後方に焦点を結びます。動物を用いた研究によりますと、成長過程の眼は、焦点のずれ(ぼけ)を低減させるような方向に成長することを示していました。しかし、眼の成長には網膜中心部よりも網膜周辺部のほうが影響が大きいことも示されていますので、図1bの状況では眼を延ばすような刺激を受けることになり、近視が進行します。新しい理論によれば、理想的な矯正状態とは、網膜中央部にクリアな像を結ぶだけではなく、網膜周辺部では結像面が網膜よりも前方にくるような、図1cに示した状態ということになります。Dr. Smithの講演は、動物実験によるこの理論の進展についてまとめたものでした。

光学的なボケによって、成長過程の眼がどのように成長していくのかが決まります。生まれたとき、眼は遠視です。そして、通常の成長にともない眼の長さが長くなり、遠視は低減されていき、正視に近づいていきます。これを正視化といいます。正視化の進行は網膜における光学的なボケによって決まります。もし、動物を完全な暗闇で育てたとしたら、正視化は起こりません。眼は遠視のままと言うことになります。一方、形がわからないくらい極端なボケがある場合、過度に眼が成長し、強度近視の原因になります。
研究者は、網膜上の光学的なボケを調整することで、眼の成長や伸長をコントロールすることができました。マイナスレンズを装用させて育てられた動物は、図2aのように結像面は網膜よりも後方になり、眼の成長を促して近視を進行させます。ボケに合わせて眼が成長するかのようです。つまり、遠視性のボケがあれば、それを打ち消すように近視化が進みます。逆にプラスレンズを装用して育った動物は、結像面が網膜よりも前方にありますので、正視化に影響して、遠視のままと言うことになります。近視性のボケでは遠視化します(図2b)。

部分的なボケはその部分の眼の成長に影響する
新しい近視理論による次のステップは、部分的なボケがその部分の眼の成長に影響することの発見です。網膜の一部に異常な光学的ボケがあるとき、何が起こるでしょうか。動物実験では、ボケがある領域の網膜が異常な成長を示し、他の部分は正常な成長を示しました(図3)。

実際の診療では、眼鏡を処方するとしても、網膜周辺部のことを考慮に入れることはありません。網膜中心部のみを矯正する眼鏡を処方します。もし、眼の成長に対して中央部の光学だけが重要であったら、少し近視を弱く矯正すれば、近視の進行を抑制できると言うことになります。
動物実験で、網膜中央部をレーザーで破壊した場合であっても、網膜周辺部のボケが眼の成長に影響することを示されました。つまり、黄斑部がなくても、遠視性のボケは近視を誘発し、近視性のボケは遠視を誘発すると言うことです。猿や鶏を使った他の研究では、網膜中心にクリアな像を結像させ、網膜周辺部は網膜より後方で結像した状態(図4)にすると、近視化が進むことを示しています。これは近視の小児に処方する通常の眼鏡がつくる光学的な状態に似ています。つまり、眼鏡で矯正した眼は、中央部では網膜上に結像し、周辺部では網膜よりも後方に結像しているのです。近視を弱めに矯正したときも同じような状態になっています。周辺部では遠視性のボケが残っているのです。

結論
これらの動物実験を人間に当てはめて考えると、近視の小児に対する最良の矯正とは、中央部でクリアな像を見せるのと同時に網膜周辺部で網膜より手前で結像(近視性のボケ)させることと考えられます。このことは近視進行を研究している研究者の間では統一見解になっています。一部の遠近両用コンタクトレンズやオルソケラトロジーでそのような状態を作り出すことができますが、通常の眼鏡ではこのような状態にはなりません。この研究によれば、通常の眼鏡では逆に近視を進行させる可能性もあるということが示唆されています。人を対象とした研究でも、小児に遠近両用ソフトコンタクトレンズやオルソケラトロジーを使用させることで近視の進行を遅らせることが示されてきました。アメリカでは、多くの医師が近視進行抑制を目的とした遠近両用ソフトコンタクトレンズやオルソケラトロジーの処方を始めています。

BASIC CLINICAL TECHNIQUES

乱視表を用いた乱視検査
私が乱視を検査するときに最もよく使う方法はジャクソンクロスシリンダー(JCC)テストです。この方法は2013年の9月号に解説しました。JCCテストは、ほとんどの場合で正確で良好な結果を得ることができます。JCCテストは最初に乱視を予測することから始めますが、それは、オートレフ、レチノスコピー、使用している眼鏡度数、ケラトなどのデータを用いて行います。その乱視の予測が適切でなかったり、JCCテストの患者の反応があまり良くないときもあります。そのようなときに用いるのが、乱視表を用いた乱視検査です(図5)。この方法は、乱視の予測をする必要はありません。乱視があることを見つけて、乱視軸と乱視度数を測定する方法です。乱視表を用いた乱視検査は次のように行います。(アメリカのオプトメトリストの多くは、自覚的屈折検査のときにマイナスの円柱度数をフォロプターに使用します)

  • 最初は、円柱度数をフォロプターに入れないで、等価球面度数(球面度数のみで最高視力の得られる度数)を求めてください。
  • 最初は右眼からです。
  • 患者の乱視度数が弱ければ、そのときの矯正視力は0.5以上になっていると思います。その状態に、+0.75Dの球面レンズを追加してください。おそらく少しぼけるでしょう。
  • 患者に乱視表を見せ、「放射線の中で他の線よりも濃くはっきり見えている線や薄くぼやけて見える線はありますか?」と聞いてください。乱視があれば、濃くはっきり見えている線とそれに直交する薄くぼやけた線があると答えるはずです。
  • 患者の答えが、「均等にぼけて見える」であったり「濃い線が2本以上ある」の場合には、+0.25Dか+0.50Dの球面レンズをさらに追加して、再度同じ質問をしてください。
  • それでも均等にぼけて見えるようであれば、おそらく乱視はありません。乱視表を用いた乱視検査はこれで終了になります。
  • 1方向の線が濃くはっきり見えていたら、「時計でいうと何時方向が濃く見えていますか」と聞いてください。たとえば、縦方向の線が濃く見える場合は6時-12時方向、横方向の線が濃く見える場合は3時-9時方向というようになります。
  • その数字に30をかけると、マイナスの円柱度数における軸度になります。縦方向、6時-12時方向が濃く見えたら、6×30=180°ですので、180°が乱視軸ということになります。
  • 球面度数は変えないでください。円柱度数は、すべての線が均等に見えるようになるまでゆっくりと追加していってください。たとえば、縦方向の線が濃く見えているときには、縦方向と横方向の線の濃さを比べさせ、横方向の線が縦方向の線と同じように濃く見えるようになるまでマイナスの円柱度数を追加していきます。このようにして乱視度数を評価します。
  • 左眼でも同じようにテストを行って下さい。

この方法で、乱視度数と乱視軸を得ることができます。この後、球面度数を調整して最高視力が得られる屈折値を導いてください。これまでのニュースレターで下の3つの方法について解説してきました。

球面度数を調整した後にJCCテストを行います。

(翻訳: 小淵輝明)

マガジン・ニュースへ