ARTICLE SUMMARY - CONTACT LENS DISCOMFORT
The Tear Film and Ocular Surface Society
The Tear Film and Ocular Surface Society (TFOS)は、眼表面の疾患に関する分野で国際協力と研究を推し進める組織です。TFOSは、著名なドライアイ研究者であるDr. David Sullivanによって2000年に創設され、80カ国から8,000名を超える会員が所属する組織です。過去10年間で、大きな国際的研究グループをいくつも作り、ドライアイ、マイボーム腺機能不全、コンタクトレンズの不快感に関する広範囲の研究を行ってきました。
TFOSは、それぞれの研究グループに50~100名の世界的に著名な研究者を集め、それぞれの分野における最高の研究について総括を行いました。そして、それぞれの課題の標準的な定義(ドライアイ疾患の基準のように)を制定し、最新の知識をまとめ、必要な研究を提唱しました。TFOSの目的は、これらの分野で将来質の高い研究をするための科学的根拠を確立することです。広く公表された報告の中で、それぞれのグループが次のようにまとめています。
- International Workshop on Dry Eye Disease (DEWS), ドライアイ疾患研究会は、2007年に報告書を公表し、その研究結果はTFOSのウェブサイトでご覧いただけます。報告書は日本語を含む8ヶ国語に翻訳されています。日本語の翻訳はJ&Jが行いました。
- International Workshop on Meibomian Gland Dysfunction, マイボーム腺機能不全研究会は、2011年3月にInvestigative Ophthalmology and Visual Scienceの特別号に報告書を掲載しました。日本語を含む10ヶ国語で読むことができます。日本語への翻訳は参天製薬が行いました。
- International Workshop on Contact Lens Discomfort, コンタクトレンズ不快感研究会の報告書は、Investigative Ophthalmology and Visual Scienceの2013年10月号に掲載されました。
エビデンスに基づいた国際的な研究に対するDr. Sullivanの目標は、世界中の研究とアイケアに影響を与えることです。
コンタクトレンズ不快感研究会の報告書
200ページの報告書が以下の章にまとめられています。
- イントロダクション
- 要旨
- コンタクトレンズ不快感の定義と分類
- 疫学
- コンタクトレンズの素材、デザイン、ケア
- 神経生物学
- 眼とコンタクトレンズの相互作用
- 涙液膜とコンタクトレンズの相互作用
- 研究設計
- 治療
今月のニュースレターは、要約の章に書かれたことのまとめを書きたいと思います。
コンタクトレンズ不快感の定義
コンタクトレンズ使用者の半数は、装用時の不快感を経験しており、それがドロップアウトの最大の要因になっています。この研究会では以下のようにコンタクトレンズ不快感を定義しています。
「コンタクトレンズ不快感とは、コンタクトレンズ装用による一時的あるいは継続的な不快な目の感覚と特徴付けられる状態である。視覚障害を伴う場合と伴わない場合があり、コンタクトレンズと目の環境の間の互換性の低下により生じる。その結果、装用時間を短縮させ、装用継続を困難にさせる。」
コンタクトレンズ不快感は、コンタクトレンズに対する眼の有害反応であるとみなされるため、コンタクトレンズ装用を中止することで解決します。コンタクトレンズ装用を中止しても継続する細菌性角膜炎のような疾患は含まれません。この標準的な定義が、研究者により密接な協働につながるような集中的かつ継続的な研究の補助になることを望んでいます。このような状態を表現するとき、「コンタクトレンズドライアイ」「コンタクトレンズ関連ドライアイ」という文言を使わずに、今後は「コンタクトレンズ不快感」という文言を使用することを推奨しています。
病因
臨床経験に基づくコンタクトレンズ不快感の原因に対する見解はいくつかありますが、コンタクトレンズ不快感の病因と過程を規定するための無作為抽出臨床試験はあまり行われていません。コンタクトレンズ不快感を病因に基づいて大きく二つに分けました。1つは「コンタクトレンズ要因」、もう一つは「環境要因」です。
「コンタクトレンズ要因」には以下のものがあります。
- レンズ素材
- レンズデザインと形状
- レンズ処方と装用
- レンズケアシステム
「環境要因」には以下のものがあります。
- 患者と健康要因
- コンプライアンス
- 涙液や瞬目などの眼の要因
- 湿度や風邪のような環境要因
これまでに行われた信頼性の高い科学的研究によると、角膜ステイニング、角膜浸潤、角膜血管新生、内皮細胞減少、結膜感染症などの所見とコンタクトレンズ不快感との間に明確な関連性は見られませんでした。しかし、マイボーム腺の変化や上眼瞼の内側縁部(Lid-wiperと呼ばれている部分)はコンタクトレンズ不快感と関連しているとする研究もあります。コンタクトレンズ装用は涙液膜の不安定性や過度の蒸発に関係しているため、コンタクトレンズメーカーにはレンズ表面の水濡れ性をさらに向上させる素材を開発することが求められます。
治療
患者がコンタクトレンズ不快感を訴えたら、可能性のある要因について調査する必要があります。
- 患者の年齢と性別
- いつ症状が始まったか
- レンズタイプと素材
- ケア
- レンズ交換スケジュール
- 装用時間
- コンプライアンス
- 環境要因
- 薬物と一般健康状態
コンタクトレンズ不快感の原因になりえる要因を見つけたら、治療や処置を開始します。たとえば、自己免疫疾患、アレルギー、眼瞼炎、ドライアイ、劣悪な環境、悪いコンプライアンスなどです。次にコンタクトレンズの損傷、汚れ付着、欠陥、あるいはフィッティング不良などについて調べます。コンタクトレンズ不快感が続くようであれば、以下の追加処置を考慮する必要があります。
- 別のMPSに変更、あるいは過酸化水素消毒に変更
- 交換時期の短いレンズに変更、あるいは1日使い捨てレンズに変更
- レンズ素材、デザインの変更
- 人工涙液やうるおい系点眼薬でドライアイへ対処
- 栄養補助食品
- 抗炎症薬の局所投与
これは、TFOSのコンタクトレンズ不快感に関する国際的な研究会の報告書の簡単なまとめです。
詳細は報告書をご確認ください。IOVSのウェブサイトで英語の報告書を見ることができます。
BASIC CLINICAL TECHNIQUE: THE 0.50-DIOPTER JUMP TEST
自覚的屈折検査をしているとき、ジャクソンクロスシリンダー検査を行う前に適正な球面度数を決定しておく必要があります。そして検査手順の最後に、最終的な屈折度数を決定する時にも適正な球面度数を決定します。先月までのニュースレターで、正確な球面度数を決定するために私が実際に行っている方法を2つご紹介しました。それはつまり、網膜上に遠方からの光を結像させるということです。
- 雲霧法(2014年1月号参照)
- レッドグリーンテスト(2014年2月号参照)
これらの方法はマイナス度数を強くしすぎないために必要な方法です。注意を怠れば、自覚的屈折検査のときに調節が介入し始めてしまいます。そうなってしまうと、患者には強すぎるマイナス度数のレンズが処方されることになります。雲霧法やレッドグリーンテストなどの方法は、調節を介入させないための方法と言えます。私はいつも雲霧法を最初に行いますが、ほとんどの患者に有効です。患者が理解できなかったり、反応が鈍い場合にはレッドグリーンテストを行います。それもうまく行えない場合には、3つ目の選択肢があります。0.50Dジャンプテストです。方法を以下にまとめます。
- ます、球面度数を予測することから始めます。オートレフを使ったり、普段使用している眼鏡を参考にしたり、レチノスコピーを使用したりします。視力は0.5かそれ以上くらいになると良いです。
- プラス度数を徐々に追加します。少なくとも0.75D程度は追加するようにします。あるいは患者がさらにぼけ始めると答える度数までプラスを追加します。
- 視力表を見るように指示し、患者に現在の球面度数のレンズと-0.50D追加した度数のレンズをすばやく見せます。それぞれのレンズを通して約1秒ずつ見せ、そして数回、2つのレンズを入れたり戻したりして(これをジャンプといいます)、プラスよりの度数のレンズで終了します。
- 2つのレンズに見え方を比較してもらいます。患者はどちらかが鮮明に見える、あるいは同じ見え方と答えるでしょう。
- 最初、患者はマイナスよりのレンズを選択するでしょう。そうであれば、2つの度数の間の度数にレンズを変更してください。それはもともとのレンズパワーに-0.25D追加した度数になります。
- 2つの度数のレンズでの見え方が同じになるか、プラス度数のレンズのほうが鮮明に見えるようになるまで続けてください。そうすると、最終的な球面度数として最もプラスよりの度数を選択することになります。
表1に最終的な球面度数が-3.00Dになる場合の手順を示します。0.50D間隔の2つのレンズを素早くジャンプさせるため、眼は調節する暇もありません。こうすることで、マイナスが強すぎる度数に処方してしまうリスクを軽減させます。
雲霧法、レッドグリーンテスト、0.50Dジャンプテストのどれも有効でなかった場合、調節麻痺剤を点眼してから再度自覚的屈折検査を行い最終的な球面度数を確認するか、調節麻痺剤を点眼せずに、屈折度数の予測から再度行ってください。うまくいけば、過矯正にならない屈折度数が求められます。
(翻訳: 小淵輝明)