GLOBAL SPECIALTY LENS SYMPOSIUM

1月23~26日にラスベガスで開催された学会、Global Specialty Lens Symposium (国際特殊レンズシンポジウム)に参加してきました。これはアメリカのコンタクトレンズ関連の学会では最大でおそらく最高の学会です。31カ国から約500名の医師、メーカーの代表者が参加しました。日本から来た10名の参加者に会えたことがとてもうれしかったです。もちろん日本コンタクトレンズ学会の先生方もいらしていました。また、世界中で有名なコンタクトレンズ専門家の先生方もいらっしゃいました。この学会はアメリカのコンタクトレンズ業界紙Contact Lens Spectrumがスポンサーになっています。学会の議題は以下の通りです。

  • 近視抑制
  • オルソケラトロジー
  • ドライアイ
  • マルチフォーカルコンタクトレンズ
  • 強膜レンズ
  • 強度の不正乱視の矯正
  • ハイブリッドレンズ
  • 角膜手術後のコンタクトレンズ
  • 角膜トポグラフィと他の画像技術
  • 小児へのコンタクトレンズ処方

近視抑制
学会はオハイオ州立大学教授のDr. Jeff Wallineによる近視抑制に関する話で始まりました。Dr. Wallineは多くの小児近視に関する研究論文を書いた先生です。

近視の発生率
近視は視力不良の主要な原因であり、残念なことに、アジアの国々を中心に世界中で増加傾向にあります。世界の人口の約22%が近視であり、2030年までに30%まで増加するといわれています。台湾では18歳女性の90%以上が近視です。しかも、極度の強度近視も以前より増えてきています。また不幸なことに、世界の近視患者の半数以上は眼鏡を持っていないため、大きな社会的、経済的な問題になっています。

近視の原因
小児の近視が進行する原因は何でしょうか。近視の進行は、眼球が成長する時期に網膜の周辺部に遠視性の焦点のずれ(網膜の後方に結像)があることが原因ということが最近の研究によりわかってきています。(図1の上)

網膜中心窩できちんと焦点を結んでいても、図1のように網膜周辺部では焦点がずれることがあります。またそのずれは、遠視性のことも近視性のこともあります。研究では、網膜周辺部の後方に焦点があることにより、焦点位置に合わせて長さを調整するように眼軸を伸ばす刺激になることが示されました。また、面積で考えると中央部よりも周辺部のほうがはるかに大きいために網膜の周辺部は中心部よりも眼の成長に影響を与えるでしょう。そして眼軸が伸びると徐々に近視になります。このように、本当に遠視性の焦点のずれが近視進行の原因になっているのであれば、網膜周辺部に近視性の焦点のずれをつくるコンタクトレンズを装用させれば良いのです。

近視進行抑制の効果
Dr. Wallineは小児の近視進行に対する数種類の対処法の有効性について相対的に比較しました。近視進行抑制に関するすべての研究を調査し、それぞれの方法の効果の平均をパーセンテージで比較したのです(図2)。パーセンテージが低いと効果が少ないことを示し、100%は完全に近視進行が止まることを意味します。

図2は、主な近視抑制方法の有効性を示しています。

  • 低矯正眼鏡 (-19%: 低矯正眼鏡は逆に近視進行を早めたことを示します)
  • ガス透過性ハードコンタクトレンズ (-7%: RGPCLでも若干近視進行を早めています)
  • 二焦点、累進多焦点眼鏡 (18%)
  • ピレンゼピン点眼
  • オルソケラトロジー
  • マルチフォーカルソフトコンタクトレンズ (52%)
  • トロピン (76%)

8歳のときに-1.00Dの近視と最初に診断された小児がいて、図3に示したように毎年0.5Dずつ近視が進行していくと、18歳になるころには-6.00になります。図3は、近視抑制方法の効果のパーセンテージの違いによる予測される近視進行の差を示しています。40%の効果がある方法では18歳の時点で-4.00D(未処置に対して2.00D低減)の近視にしかならず、55%では-3.25Dです。Dr. Wallineは、「どの程度の効果があればその方法を積極的に使おうと思いますか? たとえば、25%の有効性の方法を処方しますか?」と参加した医師に問いかけました。ほとんどの医師は、処方を考えるには少なくとも40%の有効性が必要と答えました。
そう考えると、有効と考えられる方法は以下のものになります。

  • ピレンゼピン点眼 (40%)
  • オルソケラトロジー (42%)
  • マルチフォーカルソフトコンタクトレンズ (52%)
  • アトロピン (76%)

近視抑制の薬理的方法
アトロピン点眼は最も効果的な近視抑制方法ですが、アトロピンには副作用もあります。

  • 長期的な毛様体筋麻痺と近方視のボケ
  • 長期的な瞳孔散大と羞明
  • 全身性の副作用

アトロピン使用時に、調光レンズを用いた遠近両用眼鏡を処方することで毛様体筋麻痺と羞明の一部を緩和することはできますが、全身的な副作用を低減することはできません。
0.01%の非常に弱いアトロピンが近視進行を60%遅らせたという研究もあります。このような弱い投薬では眼科的あるいは全身的な副作用も小さくなります。0.01%のアトロピンは市販されていませんが、薬剤師が市販の1%アトロピンを薄めて0.01%のものを作ることはできます。Dr. Wallineは1歳児に対して0.01%のアトロピンを処方し、数年間継続する計画であると話していました。Dr. Wallineはアトロピンは何歳で始めても安全であると信じています。
では、アトロピンはどのように作用するのでしょう。アトロピンは毛様体と調節機能を麻痺させますが、この場合、毛様体にというよりも網膜に対する生化学的効果が影響しているように見えます。どうやら、アトロピンは眼球の過剰な成長を防止する効果があるようです。他にピレンゼピンという点眼薬もありますが、市販されていませんし、FDAの認可がでるまで数年かかりそうです。したがって、ピレンゼピン点眼薬は選択肢には入れられません。

光学的な方法
オルソケラトロジーとマルチフォーカルコンタクトレンズも効果の高い方法です。これらの方法は薬理学的な副作用の心配もありません。オルソケラトロジーとマルチフォーカルコンタクトレンズを装用することで、網膜中心窩にクリアな像を結ばせながら、網膜周辺部に近視性の焦点のずれを作り出せます。ニュージーランドのAllerによる過去の研究によりマルチフォーカルレンズの有益性が示されました。アメリカでは多くのマルチフォーカルソフトコンタクトレンズが入手可能ですが、Dr. WallineはCooperVisionのProclear multifocalのDタイプ(中心遠用レンズ)を使用しています(日本で販売しているプロクリア ワンデー マルチフォーカルではありません)。Dr. Wallineは加入度数+2.00Dか患者が許容できる最も強い加入度数を使用することを推奨していました。ほとんどの小児は+2.00Dの加入度数のマルチフォーカルレンズでも適応が困難ではないことも見つけました。Dr. Brien Holdenも近視進行抑制にマルチフォーカルコンタクトレンズを積極的に処方することを薦めていました。

私自身(Dr. Salmon)の経験
私は強度近視で、子供のころに急激に近視が進行した経験がありますので、近視抑制には特に興味があるのです。また、私の子供の近視も進行しているということも近視抑制に興味を持つ理由の一つです。約1年半前、私の一番下の息子(当時12歳)は-6.00Dの近視でした。その時まで、単焦点のシリコーンハイドロゲルレンズを使用していたのですが、バイオフィニティ マルチフォーカルの中心遠用タイプ(Dタイプ)に変更させました。その1年後、彼の近視は-6.00Dのままです。マルチフォーカルソフトコンタクトレンズを使用したことで近視の進行を止めたのではないでしょうか。

まとめ
事例や科学的研究により、近視の進行は網膜周辺部の遠視性の焦点のずれによるものであるとの合意がなされようとしています。オルソケラトロジーやマルチフォーカルコンタクトレンズは小児の近視進行を抑制する効果的な方法であると考えられています。また、0.01%アトロピンも有効な方法で副作用もほとんどありませんが、0.01%アトロピンは市販されていないために薬剤師が1%アトロピンを薄めて作るしかありません。

コンタクトレンズ業界情報
Contact Lens Spectrumの編集長でもあるDr. Jason Nicholsは、一般セッションで2013年のコンタクトレンズ業界の状況について講演されました。彼が話したことの多くはContact Lens Spectrum 2014年1月号の2つの記事に書かれていることです。 コンタクトレンズ業界の2013年最大のニュースは、コンタクトレンズの装用時の不快感に関する報告を行ったTear Film and Ocular Society (TFOS)による国際的な勉強会です。この報告はInvestigative Ophtalmology and Visual Science (IOVS)の2013年10月号に掲載されています。TFOSの他の報告のように、この報告も世界中の専門家のチームによるもので、彼らがコンタクトレンズ装用時の不快感に関する知見を調査し、まとめました。この報告に関するレポートを今年後半にする予定です。

コンタクトレンズ装用感の探求 …解決への道
Dr. Donald Korbは、Global Specialty Lens Symposiumの優秀賞を受賞し、長年にわたって開発されたコンタクトレンズ装用感に対する対処法に関する基調講演を行いました。 1960年代、Dr. Bob Mandellはコンタクトレンズの装用感に対するエッジデザインの重要性に関する研究を行いました。彼らは、コンタクトレンズとの相互関係の大切さを見出し、最も快適に装用できるエッジデザインを見つけました。より薄く、より快適なコンタクトレンズの探求が1970年代のCSIレンズの開発につながりました。 その後、コンタクトレンズは酸素の問題に直面しましたが、Dr. Holden, Dr. Mertz, Dr. Pole, Dr. Mandell, Dr. Fattらによる研究が酸素透過性素材の開発につながりました。 レンズデザインと酸素透過性の問題は解決したのですが、コンタクトレンズ装用時の不快感についてはまだ問題として残ったままです。最近は、ドライアイの問題やマイボーム腺機能不全の問題に関する研究に注目が集まっています。Dr. Korbはマイボーム腺機能不全がドライアイとコンタクトレンズの不快感の原因の根源であると述べました。Dr. Korbはコンタクトレンズ装用者に対してマイボーム腺機能不全の予防になる処置を行うように勧めました。ドライアイ症状がでていない場合でもです。新しい研究ではコンタクトレンズの柔らかさやなめらかさが重要であることが示されています

近視 …現在の状況
Dr. Brien Holdenは一般セッションでも講演し、世界の視覚障害の主要な原因である未矯正の屈折異常について話されました。未矯正の屈折異常は世界の視覚障害の原因の21%を占めており、それは社会経済的な問題によるものです。しかし残念なことに、この調査は多くの国際的な健康機関に認識されていません。Dr. Holdenは講演の中で、中国で行われた最新の近視抑制に関する研究をいくつか紹介し、オルソケラトロジー、マルチフォーカルソフトコンタクトレンズ、医薬品、屋外活動などの近視抑制方法を推奨しました。昨年の日本コンタクトレンズ学会でされたご講演と同じような話でした。

世界特殊レンズシンポジウム2015
次回の国際特殊レンズシンポジウムは、2015年1月22~25日にラスベガスのバリーズホテル&カジノで開催される予定です。

BASIC CLINICAL TECHNIQUE - Binocular balance

先月のニュースレターでは、自覚的屈折検査の初期に行う単眼の球面度数の求め方を説明しました。これは、ジャクソンクロスシリンダーテスト(JCC)を用いる乱視の検査の前に行うものです(JCCの詳細は、2013年9月のニュースレターを参照)。
その次に行うのは、両眼視のバランス検査です。この手順が必要なのは、片眼ずつの屈折検査の際、右眼と左眼は異なる調節を行っていた可能性があるからです。たとえば、右眼の検査時に調節が入らず、左眼の時には0.50D調節が入ってしまっていたら、検査結果は左眼が-0.50Dだけ強くなってしまいます。両眼視しているとき、左右の眼は同じだけ調節をしており、左右のバランスが崩れていることは眼が疲れたりストレスがかかったりしてしまいます。したがって、両眼バランスの検査は両眼視の状態で行わねばなりません。

両眼バランス検査の手順

  1. 片眼ずつの屈折検査の値を参考にします。
  2. 両眼で視力表を見てもらい、少しずつプラスの度数を追加していき、0.6~0.7の視標が見えないくらいの度数にします。+0.75D追加するくらいが目安になります。
  3. 左眼に15Δ base-in、右眼に6Δ base-upのプリズムレンズを入れます(逆でも可)。患者には左上と右下に2つの視標が見えています。
  4. もし、視標が2つに見えていなかったら、プリズム度数を増やします。それでも2つに見えない場合、左右の眼を交互に隠して、どちらかの視標が見えていないかを確認します。それでもまだ見えていないという場合には、抑制が働いていることが考えられ、片眼ずつの屈折検査結果をそのまま採用せざるを得ません。
  5. 患者に2つの指標を見比べさせ、どちらがよりぼけているかを聞きます。そして、鮮明に見えているほうの眼に+0.25D追加します。これを両眼のボケが同等になるまで繰り返してください。こうすることで2つの眼の正確なバランスが取れます。
  6. 片眼ずつ交互に+0.25D追加して、両眼バランスを確認することをお勧めします。それぞれの眼に+0.25Dを入れたときに、反対の眼よりもぼけているという状態であれば、両眼バランスが取れていたということになります。
  7. プリズムレンズをはずして、両眼視で最高視力の視標がかろうじて見えるところまでゆっくり-0.25Dずつ追加します。さらに-0.25D~-0.50D追加して、最終的な両眼視での球面度数を決定します。マイナス度数を強くし過ぎて、近視過矯正(遠視低矯正)にならないように注意してください。

両眼視検査した後の最終的な屈折値は、片眼ずつ測定した屈折値と0.25~0.50D以内の違いがないはずです。この差が大きい場合は、何かの間違いを示しているのかもしれません。
これは私が患者に実際に行っている両眼バランスの検査法です。検査結果に疑いがあったり、患者の返答に矛盾があったり、答えがはっきりしないような場合には、別の両眼バランス検査法を用いる必要があるかもしれません。別の検査法についてはまたの機会に説明します。

(翻訳: 小淵輝明)

マガジン・ニュースへ