Disinfecting agents in the new generation of soft lens solutions
アメリカでは多くの異なる種類のコンタクトレンズケア用剤が販売されていて、患者はどれを買えばよいのか迷ってしまいます。単純に価格で決める人も多いでしょう。医師がケア用剤のサンプルを渡したり、特定の銘柄を推奨したりすることもあります。患者は以下のような疑問を持っているのではないでしょうか。
- いろいろなケア用剤の間に何か違いがあるのか、それともみんな同じなのか。
- 単純に価格で考えて、安いものを買えばよいのか。
- もしケア用剤に違いがあるのなら、自分にはどれが合っているのか。
ソフトコンタクトレンズを使っている患者は次のことができるケア用剤が必要になります。
- 洗浄: レンズ表面の汚れを除去
- 消毒: 細菌などを殺菌
- すすぎ: レンズ表面から剥がれた汚れを洗い流す
- 保存と親水化: レンズを快適に装用できる状態にして、乾燥を防ぐ。
数年前までソフトコンタクトレンズ患者は洗浄、消毒、すすぎ、保存にそれぞれ別のケア用剤を使用していました。現在では、1つのケア用剤ですべての機能が果たせるものがほとんどになっています。より簡単で、より便利になり、コンプライアンスの向上に役立っています。そして、コンプライアンスが向上すると角膜感染症などの合併症の危険性を低減させます。アメリカでは、90%以上の患者が化学消毒成分を使ったMPS(多目的用剤:マルチパーパスソリューション)を使用しています。他には過酸化水素を用いた消毒システムがあります。別の回で過酸化水素についても触れようと思っていますが、今月のニュースレターではアメリカでの最新のMPSについて解説します。日本や他の国でも販売されているものも含まれているかもしれません。
2005年以降に4種類のMPSがFDAより認可されました。それらは、シリコーンハイドロゲルレンズ用に開発された、消毒成分を2種類含んだものです。MPDS(多目的消毒用剤:マルチパーパスディスインフェクティングソリューション)というカテゴリーに分類される、こすり洗いやすすぎの行程がなくても所定の微生物を殺菌できるものと、消毒にこすり洗いとすすぎを必要とするMPSがあります。表1に4つの新しいケア用剤についてまとめました。
これまでの消毒液とは異なり、これらにはそれぞれ2種類の消毒成分が含まれています。すべてに共通してポリクォッドが含まれており、もう1種類が異なっています。
- 2つあるアルコン社の製品はそれぞれに0.001%のポリクォッド
- Revitalens Ocutec (AMO)には0.003%のポリクォッド
- Biotrue (Bausch + Lomb)には0.0001%のポリクォッド
ポリクォッドではない方の消毒成分は次のとおりです。
- アルコン製品にはAldox (myristamidopropyl dimethylamine)
- Revitalens Ocutec (AMO)にはaldexidine dihydrochloride
- Biotrue (Bausch + Lomb)にはDymed (polyaminopropyl biganide)
消毒成分の他にコンタクトレンズケア用剤には洗浄成分、うるおい成分、保存液成分などが含まれています。洗浄成分で一般的なものはEDTAです。表1に示したケア用剤の中では、敏感な目のために開発されたOpti-Free RepleniSH以外のものに含まれています。特定のシリコーンハイドロゲルレンズにB+Lのケア用剤(Biotrueも含まれます)を使用すると角膜ステイニングの発生率が増加してしまうという医師もいます。この現象はDymedに起因するもので、PHMBを含んだケア用剤で見られたものと同じです。PHMBとDymedは化学的によく似通っています。B+Lに批判的な人は、これを毒性の証であると解釈しますが、B+LはフルオレセインとDymedの穏やかな相互作用であり角膜上皮障害ではないと訴えます。私は個人的にBiotrueを使用していますがトラブルもありませんし、快適に使えるケア用剤だと思います。
この3社製の古いケア用剤もまだ継続して販売されています。ジェネリック版として安価で売られていることもあるかもしれません。価格は高くなるかもしれませんが、多くのアメリカの医師はこのような銘柄のケア用剤を推奨することが多いようです。私は、Biotrueの他にOpti-Free PureMoistも使ったことがありますが、古いタイプのケア用剤と比較してBiotrueやOpti-Free PureMoistが非常に快適で驚きました。最新のケア用剤は快適性が高く、高いお金を払う価値があると私は思います。それでは、どのMPSを勧めれば良いのでしょうか。
- まず、Biotrue、Opti-Free PureMoist、Revitalensの3種類のうちのどれかを推奨します。
- この中の1種類を使っている患者が不快感などを訴えた場合、4種類の中からOpti-Free RepleniSHに変更します。これは、目が敏感な人のためにAlconがOpti-Free PureMoistに変わるものとして販売しているものです。
- この中のどれにも満足されない、またはもっと強い消毒剤がほしい場合には過酸化水素消毒システムを考えます。
AREDS 2 study results
待望されていたAREDS2(Age-Related Eye Disease Study, Part 2:加齢眼障害調査その2)の結果が5月にシアトルで行われたARVO2013のスペシャルセッションで発表されました。オリジナルの5年間のAREDS研究の結果では、AREDS処方の1日量でAMD(加齢黄斑変性)の危険性を25%低減できると結論づけました。AMDは高齢者の失明の主要な原因のひとつです。オリジナルのAREDS処方には次の成分が含まれています。
- ビタミンC: 500mg
- ビタミンE: 400IU
- ベータカロチン: 15mg (ビタミンA 25,000IUと書かれることもある)
- 酸化亜鉛: 80mg
- 銅(酸化第二銅): 2mg
その後の研究でオメガ3脂肪酸、抗酸化ルテイン、ゼアキサンチンも有益であることがわかっています。他の研究では、ベータカロチンを摂っている喫煙者は肺がんの危険性が増加することが示されています。
AREDS2は慎重に設計された追跡調査であり、オメガ3脂肪酸、抗酸化ルテイン、ゼアキサンチンを食事に加えたときに、さらなる恩恵が得られるのかを調べるためのものです。また、オリジナルのAREDS処方からベータカロチンを抜いたり、亜鉛を低減させたりしたときに、得られる恩恵も低下するのかについても調べました。5年にわたるAREDS2の調査には50~82歳のAMDのリスクのある4,000人以上の人が参加し、アメリカ中の82のクリニックで評価が行われました。
AREDS2の主な結果は、
- オメガ3脂肪酸を追加することは、AREDS処方の改善にはつながりませんでした。
- ルテイン、ゼアキサンチンを追加すると、患者がベータカロチンを含んだ完全なAREDS処方を摂取しているときには若干の改善が見られました。
- AREDS処方からベータカロチンを抜いた処方を受けている患者には、ルテインとゼアキサンチンの両方を加えることでAMDのリスクを26%低減しました。ベータカロチンを含むオリジナルのAREDS処方はAMDのリスクを25%低減します。
- ルテインやゼアキサンチンが不足している食事を取っていた患者は、ルテインやゼアキサンチンを摂ることのメリットが非常に大きかったです。また、彼らは白内障のリスクも低減しました。
- 亜鉛を80mgから25mgに減少させても恩恵は低下しませんでした。
この研究では AREDS処方からベータカロチンを抜き、代わりにルテインやゼアキサンチンを加えることで、 喫煙者への有害な副作用のリスクを減少させると結論しました。亜鉛を80mgから25mgまで低減させると、有益な影響を低下させることなく、亜鉛の毒性のリスクを低減させることになります。
Journal of the American Medical Associationに掲載されたAREDS2の結果はこちらをクリックすると見られます。
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1684847
Jackson cross-cylinder test
ジャクソン クロスシリンダー テスト
眼鏡、あるいはコンタクトレンズは屈折異常を矯正するために処方されます。眼鏡、コンタクトレンズで矯正できる屈折異常は、次の3つです。
- 近視
- 遠視
- 乱視
近視はよく見られる屈折異常であり、その検査、測定も比較的簡単ですが、多くの場合、乱視も同時に見られます。乱視は検査、測定が難しいため、未矯正のままのことがあったり、正確に矯正されていないこともあります。私は自覚的屈折検査で乱視を検査するときには、ジャクソン クロスシリンダー(JCC)テストを用いることが多いです。JCCは直行する主経線にそれぞれプラスとマイナスの度数が入った乱視検査用のレンズです。フォロプターに入っている標準的なJCCは±0.25Dです。JCCテストは非常に正確であることが多いです。JCCを用いた乱視検査の方法をご紹介します。3つのステップに分けられます。
- A. 球面度数を見つけます。
- B. 乱視度数を見つけます。
- C. 乱視軸を見つけます。
A. 球面度数を見つけます。
JCCテストを始める前に、フォロプターに適切に予測した球面度数、乱視度数、乱視軸をセットします。そのためにはオートレフラクトメータを使ったり、レチノスコープを使ったり、持参された眼鏡度数をしらべたりします。そして、以下の手順に従って、焦点が網膜に来るように球面度数を調整します。
- 患者が、ボケがちょっと増加したと感じるまで、徐々にプラス度数を増やしていきます(マイナス度数を減らしていきます)。これをすることで、最初にセットした球面のマイナス度数が強すぎなかったことを確認します。
- そして、患者が1.0(20/20)の視標がかろうじて見えるようになるまでマイナス度数を徐々に増やしていきます。ここから0.25Dか0.50D追加して、網膜に最良の焦点を結ぶようにします。
B. 乱視度数を見つけます。
- JCCの赤か白の点を予測した乱視軸に合わせます。
- 視力表の1.0より1~2段大きい視標を見るように指示します。患者は、視標が少しぼけているように感じるかもしれません。
- JCCを回転させ、表と裏をひっくり返しながら見せます。そして、患者に表と裏ではどちらかがはっきり見えているか、それとも同じくらいなのかを聞きます。
- 患者の答えが、赤い点が乱視軸と一致しているときによりよく見えるということなら、乱視度数を-0.25D追加します。逆に、白い点と乱視軸が一致しているときによりよく見えているようなら、乱視度数を-0.25D分減らします。どちらも同じという答えなら、乱視度数はそれでOKです。
- もし、0.50D以上乱視度数を変更したのであれば、球面度数の調整が必要になります。-0.50D乱視度数を追加するたびに、球面度数に+0.25D追加します。あるいは、乱視度数を-0.50D弱くした場合、球面度数を-0.25D追加します。これは最小錯乱円を網膜上に維持させるためです。
- この行程を、JCCの表裏で同じ見え方になるまで繰り返します。ただし、少しぼけていることもあります。
この検査の間、最小錯乱円を網膜上に維持させる必要があります。そうしなければ、JCCテストが正確に行えません。最小錯乱円を網膜上に位置させるときに2つの度数で迷った場合、弱いほうの度数を選択してください。
C. 乱視軸を見つけます。
ここまでで、正確な球面度数と乱視度数を得ているはずです。しかし、乱視軸については正確とはいえません。
- JCCの赤い点と白い点の中間(回転軸に一致している点)と予測した乱視軸に合わせます。
- JCCを表裏にひっくり返しながら見せます。そして、患者に表と裏ではどちらかがよく見えているか、それとも同じくらいなのかを聞きます。よく見えたほうでJCCをそのままにします。
- JCCの赤い点の方向に乱視軸を少し(1~10°)回転させます。
- 再度、JCCの赤い点と白い点の中間と乱視軸を合わせますが、今度は3でずらした乱視軸に合わせます。
- 表と裏で見え方が同じになるまで繰り返します。ただし、少しぼけていることもあります。
JCCテストは球面度数、乱視度数、乱視軸を先に適切に予測しておく必要があります。そして、その予測した度数を基に微調整をして最終度数にします。JCCテストにおいて、乱視度数や乱視軸を大きく調整した場合、予測した度数が違いすぎるということであり、もう一度最初からやり直す必要があることもあります。多くの場合、JCCテストは非常に正確です。必要に応じて、手持ちのJCCを使ってJCCテストをすることもできます。
(翻訳: 小淵輝明)