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日本コンタクトレンズ学会総会
7月5日(土)、6日(日)に東京国際フォーラムで開催された日本コンタクトレンズ学会総会(フォーサム2014東京)に参加してきました。久しぶりに会う友人との再会を楽しんだり、講演を聞いたり、最新の研究発表を聞いたり、充実した時間を過ごしました。私にとっては学会に参加することで得られる良い点は別にもあります。それは、講演を全て日本語で聞けることです。オクラホマでは日本語に接する機会が減ってきていますので、日本の学会は日本語を学ぶにも絶好の機会なのです。もちろん、日本語で全てを理解することは出来ないのですが、眼の研究に関する言語を学べることが楽しいのです。また、クーパービジョンのモーニングセミナー「敬語のこころ ~言葉遣いは言葉遣いから~」にも参加してきましたが、興味深いセミナーでした。

学会中に、次の3つの特別講演がありました。

  • The role of contact lenses following surgery for uveitic cataract (Dr. David Chu, USA)
  • 涙液からみたコンタクトレンズ (横井 則彦先生)
  • 眼表面再建術後の治療用コンタクトレンズ脱落に関わる因子 (相馬 剛至先生)

2つのシンポジウムがありました。

  • 特殊コンタクトレンズ
  • コンタクトレンズとオキュラーサーフェス

また、29題の一般演題、30の企業との共催セミナーがありました。

カラーコンタクトレンズ
今年の学会で最も話題になっていたのが、カラーコンタクトレンズ(図1)でした。アメリカにもカラーコンタクトレンズはありますが、日本やアジア諸国のように多くは使われていません。日本では若者を中心にカラーコンタクトレンズが普及していますが、カラーコンタクトレンズの使用により、眼障害が多く発生していることが問題のようです。その眼障害にはアカントアメーバ角膜炎のような重篤なものも含まれます。(アカントアメーバ角膜炎については、2013年12月号のニュースレターを参照してください)次の要因によって、カラーコンタクトレンズが眼障害の危険因子になっています。

 
  • カラーコンタクトレンズは眼科医の処方を受けずに購入されている。
  • インターネットや大型ディスカウントショップで購入されるケースがほとんどである。
  • カラーコンタクトレンズ使用者の多くはレンズケアや取り扱いの指導を受けておらず、コンタクトレンズを正しく取り扱っていない。
  • カラーコンタクトレンズの多くは酸素透過性の低い古い低含水素材で出来ている。
  • これらの古い低含水素材は、今主流のレンズよりも硬い。
  • 着色部分の顔料が装用中にはがれてしまうことがある。
  • カラーコンタクトレンズ使用者は長時間装用する傾向がある
  • カラーコンタクトレンズはセンターリングを良くするためにタイトフィットになるレンズが多い。タイトフィットになると、涙液交換が悪く、角膜の代謝を阻害する。

これらの危険因子は災難のもとになります。この結果、重大な健康問題になります。眼科医の先生方、医会、学会などが厚生労働省に働きかけ、カラーコンタクトレンズ使用者の安全を向上させることが出来るかもしれません。

OCTを用いたコンタクトレンズ処方
OCTを用いたコンタクトレンズフィッティングもいくつかの講演で発表されていました。OCTはコンタクトレンズと角膜の断面を撮影することが出来ますので、角膜に乗ったコンタクトレンズのフィッティング状態を直接見ることができるのです。理想的には、コンタクトレンズのサジタルデプス(円弧の高さ)と角膜のサジタルデプスは図2に示したようによくあっている必要があります。これは不正な角膜に装用する治療用コンタクトレンズを処方する際にも役立ちます。

ドライアイと涙液膜の安定性
ドライアイの評価方法に関する講演もいくつかありました。ドライアイの根本的な原因の一つは涙液膜の不安定性ですが、それにはいくつかの原因があります。コンタクトレンズを装用すると涙液膜は2つに分断されます。このことは正常な涙液の生理に影響し、不安定性を招きます。そして、上眼瞼のリッドワイパーの機能にも影響します。このこともまた涙液膜の不安定化の要因になります。これらのことによりコンタクトレンズによるドライアイが引き起こされるのです。ドライアイを評価するために様々な機器が検討されてきました。

  • コーワ社製DR-1は、涙液膜の干渉計です。涙液の油層を拡大して見ることができ、フルオレセインなしで涙液膜の破壊を観察することが出来ます。(非侵襲性BUT)
  • メニスコメトリーは、眼瞼縁の涙液メニスカスにテストパターンを投影して涙液の著流量を推測する方法です。

ここ数年と比較して、今年のコンタクトレンズ学会は、カラーコンタクトレンズによるものを除いて角膜感染症に関する講演が少なかったように思います。アカントアメーバ角膜炎が減少して来ていることを示した講演がありました。

BASIC CLINICAL TECHNIQUES – High Astigmatism

オクラホマにはアメリカインディアンがたくさん住んでします。アメリカインディアンの人たちは乱視が多く、2.00D以上の強度乱視の患者を診ることも珍しいことではありません。私が診た中で一番強い乱視は9.00Dですが。4~6.00Dの乱視も珍しくはありません。もちろん、日本でも強度乱視の人はいます。実際、私の母(日本人です)も4.00Dの乱視です。

強度乱視に関する考え方
強度乱視患者の屈折を測定するときの考え方を学生に教えています。

  • 視力がよく出る患者の場合、乱視軸のずれに敏感です。したがって、乱視軸を正確に測定する必要があります。たった1°だけのずれであっても、視力に影響することがあります。
  • 2.00D以上の乱視の場合、マイナスシリンダーの軸は180°付近、すなわち直乱視のことが多いです。
  • このような場合、乱視は角膜によるものがほとんどです。したがって、ケラトを測定することが乱視測定の一つの方法になります。ケラトは角膜乱視を直接測定することが出来ます。
  • 強度の乱視があるにもかかわらず長年未矯正であった患者は、自覚的屈折検査の反応が鈍く、矯正視力も1.0未満になることがあります。たとえば、ジャクソンクロスシリンダーテストを行っても矛盾したり、漠然とした反応しか示さなかったり、矯正視力が最高でも0.7程度だったりします。

屈折検査の手順
この事に留意しつつ、強度の乱視患者の屈折検査の手順を変更することがあります。

  1. 標準的な屈折検査と同様に、患者の球面度数、乱視度数などの屈折の予測を立てることから始めます。屈折の予測は次のように行います。
    • 普段使用している眼鏡の度数測定
    • レチノスコピー(検影法)
    • オートレフラクトメータ
    これらが全て使えない場合、ケラトを測定して、角膜乱視の量を確認しましょう。もし、角膜乱視が2.00D以上あるような場合、全乱視のマイナスシリンダーの乱視軸が弱主経線にあり、乱視度数もそれに近いものと考えてよいです。
  2. 標準的な屈折検査を行い、球面度数を決めてください。(ニュースレターの2014年1月号を参照)
  3. 標準的な手順に従い、ジャクソンクロスシリンダーテストを行ってください。(ニュースレターの2013年9月号を参照)
  4. ジャクソンクロスシリンダーテストで患者の反応が乏しいようなら、患者に視力表を見せながら、軸の調整も患者自身にさせるようにしています。乱視が強い場合、この方法で乱視軸を正確に見つけ出すことが出来ます。
     
  5. 乱視軸を決めたら、乱視度数を調整します。その際、患者の反応が弱い場合、乱視度数を0.50D以上の幅で変更しながら調整します。視力が低下したことに患者が気づくまで乱視度数を弱める、あるいは、視力が向上しなくなるまで乱視度数を強めたりします。0.50Dステップでマイナスシリンダーを増やしていくとき、球面度数を+0.25D追加してバランスをとります。同様に、マイナスシリンダーを0.5Dずつ減らすときには、球面度数を-0.25D追加してバランスをとります。

乱視度数を決定したら、もう一度乱視軸の確認をします。

何を処方するのか
屈折検査が終わったら、実際の眼鏡度数を決める必要があります。

  • 1.0以上の矯正視力が得られる場合、あるいは乱視を完全に矯正すると高い質の視力が得られる場合、私は乱視を完全に矯正するか0.25D程度弱い度数で処方します。円柱軸は検査で得られた軸に合わせます。
  • 患者が、①これまで乱視を矯正してきていない場合、②自覚的屈折検査で反応が弱い場合、③矯正視力で1.0が得られない場合、乱視を完全に矯正するのではなく、弱めの矯正にします。乱視度数の50~75%を矯正して処方をしたりします。その場合、未矯正の乱視度数分の等価球面度数を球面度数に追加して調整します。円柱軸は検査で得られた軸に合わせます。

新しい眼鏡処方の度数がこれまで使用していた眼鏡と大きく異なる場合、あるいは、矯正視力が1.0に満たない場合、1~2ヵ月後に検診の予約を取り、新しい眼鏡での視力を確認して、屈折異常を再検査します。新しい眼鏡を数ヶ月装用した後、矯正視力が向上し、自覚的屈折検査の反応がよくなることがあります。

(翻訳: 小淵輝明)

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