遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方

これまで、遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方は煩雑で度数の調整が難しく、遠近両用ソフトコンタクトレンズは処方成功率が低いと考えられてきました。しかし、最近では遠近両用ソフトコンタクトレンズの光学デザインは進化し、処方方法も簡単で成功率の高いものが紹介されてきています。

遠近両用ソフトコンタクトレンズが適応しやすい人

遠近両用ソフトコンタクトレンズの処方が最も成功しやすい装用者の特徴は、以下のとおりです。

  • 近視や遠視を矯正するソフトコンタクトレンズを普段使用している。
  • 現在の近くの見え方に不満があり、遠近両用ソフトコンタクトレンズを使うことに意欲がある。
  • 老眼鏡や遠近両用メガネを使うことに抵抗がある。
  • 全乱視が1.0D未満である。

加入度数の高い遠近両用ソフトコンタクトレンズは、加入度数が低いものに比べて一般的に見え方の質が低下します。近くの見え方に不満がではじめる老視の初期から低加入度数の遠近両用ソフトコンタクトレンズを処方したほうが、見え方にも慣れやすく、処方成功率が高くなると考えられます。

遠近両用ソフトコンタクトレンズ処方前の説明

遠近両用ソフトコンタクトレンズを処方する前に、次の点について説明してください。

  • 遠近両用ソフトコンタクトレンズを使用することで、若干遠方の見え方にボケを感じることがある。
  • 個人差はあるが、初めて遠近両用ソフトコンタクトレンズを使用するときには見え方に慣れるまで数日かかることがある。
  • 薄暗い場所では見えにくさを感じることがある。

適切な屈折検査とトライアルレンズ度数

正確な屈折検査はコンタクトレンズ処方の基本です。自覚的屈折検査値から等価球面度数を計算し、さらに頂点間距離補正を行います。そうして得られた度数に+1.00D追加したものが遠近両用ソフトコンタクトレンズのトライアルレンズ度数になります。 遠近両用ソフトコンタクトレンズ処方では、特に(近視)過矯正を防ぐことが大切です。実際に自覚的屈折検査の値よりもプラス側で最終処方度数になることもあるため、自覚的屈折検査値+1.0Dくらいからスタートすることで(近視)過矯正を防ぐことができます。
また、加入度数は年齢にかかわらず最も弱い加入度数のトライアルレンズを選択します。

遠近両用コンタクトレンズの度数調整は両目で行う

遠近両用ソフトコンタクトレンズのトライアルレンズを装用して度数調整を行う際には、片眼ずつ行うのではなく、必ず両眼開放で行ってください。両眼開放で検査するほうが、片眼ずつ検査するよりも若干プラス側の度数で遠方の見え方に高い満足度が得られます。両眼開放で検査することで、(近視)過矯正を防ぐことができます。

実際のものの見え方で確認

度数調整の際の見え方の確認は、視力表を使うのではなく、遠方であれば院内の測定機器やカレンダー、掲示物など、近方は雑誌、新聞、携帯電話の画面などを使って行います。

良好な遠方あるいは近方の見え方が得られなかった場合

最初に装用したトライアルレンズで度数を調整しても見え方に満足できなかった場合、遠方を見えるように調整した度数から、非利き目の度数のみを+0.25Dずつ追加していき、近くに見え方に満足できる度数を探してください。その際も両眼開放のままで確認します。それでも、満足できる見え方が得られなかったら、1段階高い加入度数のトライアルレンズを試してください。