Dr Salmon News Article Top Image

GLOBAL SPECIALTY LENS SYMPOSIUM REVIEW, PART 2

GLOBAL SPECIALTY LENS SYMPOSIUM(国際特殊レンズシンポジウム)、その2

先月の復習
Global Specialty Lens Symposium (国際特殊レンズシンポジウム、GSLS)の学会は1月22~25日にラスベガスで開催されました。先月のニュースレターで、学会の最初の4つの一般的なセッションについてまとめました。

  • 一般セッション1と2はコンタクトレンズ業界に関するものでした。その多くはContac Lens Spectrumの1月号に掲載されて、このニュースレターの2月号にまとめた内容です。
  • 一般セッションの3と4は強膜レンズの処方に関するものです。

GSLSはアメリカで最大級のコンタクトレンズに関する学会です。学会は4日間開かれ、コンタクトレンズに関する講習やパネルディスカッション、新しい研究のポスター発表などがありました。各メーカーは、分科会でそれぞれの得意分野における教育的なプログラムを展開し、大きな展示ホールで製品の紹介をしていました。今年の学会で注目されたテーマは、強膜レンズ、近視進行抑制、オルソケラトロジー、マルチフォーカルコンタクトレンズなどでした。

セッション6: ソフトコンタクトレンズのカスタマイズ ソフトコンタクトレンズ処方の新時代
1月23日 金曜日、14:00~15:00

コンタクトレンズは素材、デザイン、その他の部分で多くの進歩があったにも関わらず、コンタクトレンズ装用のドロップアウト率は1990年代からほとんど変化していません。4名のドクター(2名はオランダから、1名はアメリカから、1名はイギリスから)によるパネルディスカッションが行われました。

コンタクトレンズのドロップアウトの主な原因はコンタクトレンズ装用の不快感であることで4人の意見が一致しました。現在、ソフトコンタクトレンズのフィッティングはレンズのセンターリングと動きを観察することで評価されています。コンタクトレンズの過剰な動きは異物感や違和感の原因になりますので、動きに注意を払い、より良いフィッティングでより多くの患者に快適に装用してもらい、処方成功率を上げます。彼らはレンズのサジタルデプス(弧の深さ)と角膜のサジタルデプスを合わせる新しいフィッティング方法について議論しました。 この方法は強膜と角膜のジャンクション(つなぎ目)にも関係し、良いフィッティングが得られます。面白いことに、彼らは日本の吉川義三先生の論文1)を参照していました。吉川先生は日本のコンタクトレンズの分野における最も革新的な先生の一人です。 1979年の先生の論文によると、ソフトコンタクトレンズの弾性が強膜と角膜のジャンクション部分付近で輪ゴムのように働くとされています。 最近の前眼部OCTを用いた研究により、吉川先生の理論が正しことが証明されました2)。前眼部OCTのような新しい機器によってソフトコンタクトレンズ処方のカスタマイズが可能になり、患者に快適に装用させる事ができるようになるでしょう。

Dr. Salmonコメント: 私は1980年代に吉川先生と一緒に働く機会に恵まれました。先生と共同で論文もいくつか発表しました。吉川先生は2012年12月に99歳で他界され、このニュースレターでも先生について取り上げました。

メーカー協賛分科会セッション: 近視進行抑制のためのカスタムソフトコンタクトレンズ (Contamac)
1月23日 金曜日、15:15~16:15

このセッションは非常に人気があり、全てのいすは埋まり、会場の周りには多くのドクターが近視進行抑制のセッションを聞くために立っていました。パシフィック大学オプトメトリ学科の教授でContamac社の相談役でもあるDr. Pat Carolineが最近の近視進行抑制の研究についてまとめ、パシフィック大学での小児への処方について説明しました。
アメリカで最も使用されている近視抑制レンズはCooperVisionのProclear Multifokaru(日本で販売しているプロクリア ワンデー マルチフォーカルではありません)とBiofinity Multifocalの中心遠用度数のタイプです。Dr. Carolineは7歳の近視患者に対する処方について説明しました。レンズ中央の遠用度数は完全矯正に合わせて加入度数を+3.00Dとするように推奨しています。6ヵ月後に測定して、近視が進行しているようなら、加入度数を+0.50D追加します。これは一見、小児には加入度数が強すぎるように思えます。しかし、通常の視力が得られ、大きな問題はないということです。パシフィック大学では多くの小児に対して近視進行抑制の処方をしています。その約半数はマルチフォーカルコンタクトレンズで半数がオルソケラトロジーの処方です。
このセッションに協賛していたContamac社は、新しい近視進行抑制レンズをオーストラリアのDr. Brien Holden の視覚研究所と共同で開発したそうです。
(このニュースレターの2014年6月号から11月号で近視進行に関する研究について解説しています)

セッション9: コンタクトレンズケア製品 規制と疫学的問題
1月24日 土曜日、9:00~10:00

アメリカ疾病管理センターはコンタクトレンズケアに水道水を使用しないように勧めており、このセッションのパネリストも決してソフトコンタクトレンズに水道水を使わないように勧めています。しかし、ガス透過性ハードコンタクトレンズ(RGPCL)のすすぎに水道水を使うことは可能なのでしょうか。多くのドクターは臨床でもそうしています。RGPCLの洗浄を専用の洗浄液で行い、保存する前に洗浄液を全て取り除く必要があります。水はRGPCLをすすぐのに最適な液になりえる特性があるというドクターもいました。水はふんだんに使うことができ、レンズから洗浄液などを除去できるすばらしい液だということです。コンタクトレンズケアは無菌で行う作業ではありません。完全に無菌な液を使用する必要はないということです。アメリカのFDAもRGPCLを水道水ですすいで感染症の危険性が増えるというデータを持っていません。そのドクターは、RGPCLを洗浄して保存する前に行うすすぎに水道水を使用することが理にかなっていると結論付けました。

セッション12: コンタクトレンズによる近視の管理
1月24日 土曜日、14:00~16:00

4名の著名な近視研究者(Dr. Earl Smith, Dr. Monica Jong, Dr. Tom Aller, Dr. Brien Holdern)が近視の疫学、近視抑制についての展望を議論しました。

アメリカのDr. Smithは、動物を使った研究について説明しました。それは、動物の若年期には網膜像のボケによって眼球が成長するというものです。遠視性のボケ(網膜よりも後面に焦点を結ぶ)は眼球の長さ(眼軸長)を伸ばしすぎてしまいます。逆に近視性のボケ(網膜よりも手前に焦点を結ぶ)は眼軸長の成長を遅らせます。理想的な屈折状態は、網膜周辺部に近視性のボケがあり、網膜の中央部で鮮明な像が得られている状態です。もし、乱視のように複数の焦点がある場合はどうでしょう。その場合には、最も近視側の経線に反応します。これは、近視性と遠視性の両方のぼけが同時に起こる二重焦点のコンタクトレンズでも同じことが言えます。眼は近視性のボケ、網膜の手前にある焦点に合うように成長します。それが比較的小さな領域であってもそうなります。従来のコンタクトレンズは網膜周辺部で遠視性のボケを作り出します。これは近視抑制にとっては良くない矯正です。実際、従来のコンタクトレンズは過度の眼軸長の成長を促し、近視を進行させます。レンズメーカーは、網膜周辺部に近視性のボケを作るコンタクトレンズを作らなければなりません。付け加えると、野外活動や明るい照明も近視進行を遅らせることがわかっています。

オーストラリアのDr. Jongは近視の広がりを疫学的に検討しました。2020年までに17億人が近視になり、2050年までに25億人になるとのことです。近視の増加は特にアジアで起こります。その上、強度近視も増え、子供が近視になるのが早くなり、18歳以上になっても近視が進行する人も増えていくそうです。台湾とシンガポールのドクターは、近視の進行を遅らせるために低用量のアトロピンを処方し、副作用なく近視進行を49%減少させました。チョコレートやコーヒーから見つかった7-メチルキサンチン(7-MX)のような物質も近視進行を遅らせることがわかっています3)

アメリカのDr. Allerは、近視進行抑制にマルチフォーカルソフトコンタクトレンズを使用した最初のドクターの一人です。私もこのニュースレターで彼の貢献について書きました(2014年9月号)。今では、より多くのドクターが近視抑制の処方をしていますが、Dr. Allerはコンタクトレンズや眼科用レンズメーカーがほとんど何もしてこなかったことに疑問を持っています。近視進行抑制レンズとしては、網膜周辺部に近視性のボケが発生する事が理想です。マルチフォーカルソフトコンタクトレンズとオルソケラトロジーレンズはそれができます。メガネレンズでもそのような光学特性を持たせるように設計することは可能です。一方で、従来のコンタクトレンズは逆の光学特性を持つために近視を進行させてしまいます。Dr. Allerは子供には従来のコンタクトレンズを処方するべきではなく、近視進行を遅らせるレンズを処方するべきであると主張しています。多くのドクターは中心部が遠用度数のマルチフォーカルレンズを処方していますが、Dr. Allerは瞳孔領内に近用度数部分が入ってさえ入れば、中心部が近用度数のレンズを含むどのマルチフォーカルレンズでも効果があるのではないかと考えています。近視進行抑制に関する多くの情報があるウェブサイト “myopiacontrol.org”を見に来るように勧めていました。そのサイトは、Michigan College of Optometryの提供で作られたものです。

オーストラリアのDr. Holdenは、コンタクトレンズ研究や発展途上国におけるアイケアの向上への貢献などで国際的に有名なドクターです。2013年の日本コンタクトレンズ学会の招待講演で世界的な近視の広がりや近視抑制についての講演をしています(2013年8月号を参照)。このパネルディスカッションでDr. Holdenは、次のことを示しました。

  1. 近視はいたるところで増加している。世界の近視人口は20年で倍になっている。
  2. 近視進行抑制は有効である。
  3. 成長期の小児に従来のコンタクトレンズを装用させると近視を進行させる。

Dr. Holdenは上記のことを考えてこう問いました。「なぜドクターやコンタクトレンズメーカーは近視を進行させる原因になるコンタクトレンズを処方したり売ったりし続けているのか?」 近視は切実な問題であること、近視はマルチフォーカルレンズやオルソケラトロジーレンズを使用することで予防することができることを世界に知らしめる必要があります。また、野外活動も近視進行を遅らせますので、子供には少なくとも週6日、80分以上野外活動させることを推奨しています。これだけでも約30%の近視抑制になります。

来月のニュースレターでもGSLSの学会報告をしたいと思っています。

参考文献

  1. Kikkawa Y. Kinetics of soft contact lens fitting. Contacto, 1979;23:11-7.
  2. Hall LA. The influene of corneoscleral topography on soft contact lens fit. Invest Ophthalmol Vis Sci 2011;52:6801-6.
  3. Trier K. Systemic 7-methdyxanthine in retarding axial eye growth and myopia progression: a 36-moth pilot study. J Ocul Biol Dis Inform 2008 Dec 1:85-93.

BASIC CLINICAL TECHNIQUES – Hirschberg Test - Part 1

最近4ヶ月分のニュースレターで遮閉試験(カバーテスト)について説明してきました。遮閉試験は斜視や斜位などの眼位異常を評価するための検査です。今回は斜視を簡単に評価するためのヒルシュベルグ法について説明します。

検査手順
ヒルシュベルグ法は角膜反射を用いた斜視の検査です。まず、患者から約50cmの距離に座り、ペンライトなどの光源を患者の正面になるように持ちます。患者にはペンライトを見るように指示して、患者の角膜に映った光の反射を観察します。患者に斜視がなく、両眼で固視が出来ていれば、光の反射は瞳孔の中心から0.25~0.5mm程度鼻側に見えます。斜視がない場合にはこれが正常な位置です。斜視を診断するためには、正常な眼位の角膜反射の位置と実際の角膜反射の位置を比較する必要があります。

斜視のない正常な眼位
斜視のない正常な眼位では角膜からの反射は少し中心からずれて鼻側にあります。それはなぜでしょう。ラムダ角によってずれが起こるのです。ラムダ角とは眼の2つの基準軸(視軸と瞳孔軸)の間にできる小さい角度のことです。視軸は、固視点と瞳孔中心を結ぶ軸で、瞳孔軸は、瞳孔中心から角膜と垂直方向に出る軸をさします。視軸は目がどこを見ているかを示す軸で、瞳孔軸は目がどちらを向いているかを示す軸です。

図1. 右眼を上から見た図。図の上方が耳側、下方が鼻側。多くの場合、瞳孔軸(図の中心を通る線)よりも視軸のほうが鼻側にあります。瞳孔軸と視軸の成す角度がラムダ角

眼は、眼が向いている方向を見ていると思っている人がいるかもしれませんが、それは正しくはありません。眼は非対称な光学システムであり、眼が向いている方向(瞳孔軸)は眼が見ている方向(視軸)よりも若干耳側にずれています。視軸が瞳孔軸よりも鼻側にずれている場合、図1に示すとおり、眼はプラスのラムダ角を持ち、瞳孔軸が視軸よりも鼻側にあればマイナスのラムダ角を持つということになります。正常なラムダ角は約+5度です。

正面から見たラムダ角
プラスのラムダ角がある場合、真正面を見ているときには(視軸が正面)、瞳孔の位置は若干耳側にずれて見えます。つまり、患者が光源を見ているときには、角膜反射が示す視軸は瞳孔中心が示す瞳孔軸より若干鼻側にずれるということです。下図は、正常なプラスのラムダ角を持つ眼を示しています。

図2. 眼位が正常でプラスのラムダ角を持つ眼です。角膜の反射は瞳孔中心よりも若干鼻側にずれています。この図では若干誇張されています。
(図はNSUと契約しているClinical Keyより)

斜視に対するヒルシュベルグ法を理解するにはラムダ角について知っておく必要があります。
来月のニュースレターではこのことについて説明します。

(翻訳: 小淵輝明)

マガジン・ニュースへ