Association for Research in Vision and Ophthalmology (ARVO)

5月8日(水)
講演セッション:弱視

Binocular iPad Treatment for Amblyopia
弱視に対するiPadを用いた両眼視で行う治療
Simone Li, Retina Foundation of the Southwest, USA

この研究の目的は、弱視に対する両眼分離で行う訓練のために開発されたiPadアプリの評価をすることです。これは、両眼に刺激をあたえるのですが、左右それぞれの眼に別々の目標物を見せるようになっています。また、良いほうの眼に眼帯をして弱視のほうの眼だけに刺激を与える従来の弱視訓練とは異なる方法です。39名の小児を対象に4~8週間両眼分離による訓練を実施しました。最初は弱視の方の眼に見せる像のコントラストは100%で、良い方の眼の像のコントラストは低く設定されます。両眼視が向上してくると、良い方の眼の像のコントラストも上げます。この試験に適合した子どもたちは4週間の訓練の後に弱視のほうの眼の視力が1段階(0.12 logMAR)向上しました。子どもの年齢が若い方が効果も高くなることもわかりました。

Dichoptic Perceptual Learning Induces Visual Cortex Plasticity in Adults with Amblyopia
両眼分離の知覚的な訓練は弱視の大人の視覚皮質の可塑性を誘発する
Jinrong Li, Sun Yat-sen University, China

両眼分離あるいは片眼で行うテレビゲーム訓練を受けた大人の弱視患者の視力の向上を比較しました。その結果、両眼で訓練を受けた群の視力、抑制、立体視が片眼の群よりも有意に向上していることがわかりました。 

ポスターセッション:角膜クロスリンキングと円錐角膜

Assessment the Long Term Effect of Corneal Cross-linking on Corneal Ectasia on Keratoconus
円錐角膜のケラトエクタジアに対する角膜クロスリンキングの長期的効果の評価
Illes Kovacs, Semmelweis University, Hungary 

これはプロスペクティブな研究であり、角膜クロスリンキング術を受けた22眼の円錐角膜進行例の12~25ヵ月後のシャインプフルーク画像により、角膜のスティープ化、菲薄化、角膜後面の突出を抑えることができました。

Two Year Results of Corneal Cross-linking in Pediatric Patients with Progressive Keratoconus
円錐角膜進行例の小児患者に対する角膜クロスリンキング2年間の結果
Dan Epstein, University of Bern, Switzerland 

角膜クロスリンキング施術後少なくとも24ヶ月経過した48眼の円錐角膜進行例の小児患者(平均年齢13.7歳)の研究です。未矯正視力、矯正視力、屈折異常(球面および円柱度数)、角膜のスティープ化、角膜の薄さ、高次収差(角膜および全収差)の点で有意に向上していました。角膜クロスリンキングは小児の円錐角膜に対して有効な治療法であることが示されました。

5月9日(木)
ポスターセッション: コンタクトレンズ Ⅱ

Comparative Study of Refractive Changes between Glasses and Contact Lenses Users - 5 Years Prospective Study against Approximately 273 Thousand Japanese Eyes 
眼鏡およびコンタクトレンズ使用者の屈折変化の比較 ― 日本人275,000眼に対する5年間のプロスペクティブ研究 
Masao Yoshida, Kyorin University, Japan 

この大規模な研究の目的は、眼鏡装用者の屈折変化がコンタクトレンズ使用者よりも早いかどうかを確認することです。対象は横浜市内のクリニックで処方された、眼鏡13,977眼およびコンタクトレンズ273,042眼で、5年間経過観察しました。その結果、20歳以下の患者ではコンタクトレンズよりも眼鏡を使用しているほうが近視の進行が早かったです。50歳以上の患者ではコンタクトレンズよりも眼鏡使用者のほうが遠視の進行が早かったです。25~34歳の男性および20~24歳の女性ではコンタクトレンズ使用者の近視進行が早く起こりました。

TCorrection of Infant Aphakia after Cataract Surgery with Rigid Gas Permeable Contact Lenses
白内障術後の幼児の無水晶体眼に対するガス透過性ハードコンタクトレンズによる矯正
Anja Gruenert, Heinrich-Heine University, Germany

ガス透過性ハードコンタクトレンズが処方された無水晶体眼の小児75眼をレトロスペクティブに評価しました。ガス透過性ハードコンタクトレンズに良く慣れて、コンプライアンスも良好でした。両親がコンタクトレンズを扱う練習を行い、簡単に扱えるようになりました。視力が1.0まで向上した幼児は、手術を受けたのが早く、両眼性の無水晶体眼でした。片眼性の無水晶体眼は弱視になる例がよく見られました。時間とともに遠視は低減しますので、処方交換の必要がありました。これは、このような研究では最大級のものです。

Designing Multifocal Contact Lenses Using a Novel Through-Focus Image Quality Metric Highly Correlated with Clinical Visual Acuity
臨床的な視力と強く相関する新しいThrough-Focus画質測定基準を用いたマルチフォーカルレンズの設計
Nishant Mohan, Bausch and Lomb, USA

この研究は模型眼を使用した光学設計ソフトウェアが遠方および近方の見え方を正確に予測することができ、コンピュータで予測された視力と臨床的な視力が強く相関することを示しました。

Evaluation of an Autorefractor for Over-Refraction with Multifocal Contact Lens Patients
マルチフォーカルコンタクトレンズを装用した上からのオートレフの評価
Anna Giner, Polithechnical University of Catalonia, Spain

この研究では、AirOptix Multifocal (Ciba Vision)、 Proclear Multifocal (CooperVision、注:プロクリア ワンデー マルチフォーカルではありません) 、 Acuvue Oasys Multifocal (Johnson and Johnson)の3種類のマルチフォーカルレンズの屈折特性についてオートレフラクトメータ(Grand Seiko WAM-5500)の正確性を自覚的屈折検査と比較して評価しています。Air OptixとProclearの球面度数の誤差は+0.5Dで、Acuvue Oasysは-0.15Dでした。円柱度数の誤差は非常に小さなものでした。マルチフォーカルレンズを装用して測定するオーバーレフは十分に正確なものであり、有用であると結論付けました。しかし、誤差は強い近視や遠視の場合に大きくなります。

Peripheral Defocus with Spherical and Bifocal Soft Contact Lenses
球面とバイフォーカルソフトコンタクトレンズの周辺部の焦点のずれ
David Berntsen, University of Houston, USA

網膜周辺部に近視性の焦点のずれを作ることが、近視進行を予防あるいは抑制する方法として最近注目を集めています。理論的には、マルチフォーカルレンズやオルソケラトロジーを用いて行われます。この研究の目的は、球面レンズ(Biofinity)とマルチフォーカルレンズ(Biofinity Multifocal D lens, 加入度数+2.50 D)を25眼(平均年齢:23.8歳)に装用させ、周辺部の屈折異常を測定することです。遠方視ではマルチフォーカルレンズ装用眼は網膜周辺部で1~2Dの近視性の焦点のずれがありましたが、球面レンズでは遠視性の焦点のずれを起こしていました。Biofinity D lensのような中心遠用のマルチフォーカルレンズは近視進行抑制の有効な方法になる可能性があります

The Large Scale Epidemiological Study on the Prescription of Contact Lenses in Japan - The Results from Analyzing Approximately 330,000 Eyes of Japanese Subjects
日本で処方されたコンタクトレンズの疫学的大規模研究 - 日本人約33万眼を対象とした解析結果

Eiichi Okada, Yokohama City University, Japan 
この大規模な研究は横浜の単一クリニックで処方された30万眼以上の屈折矯正を調査したもので、年齢や性別によりコンタクトレンズの処方傾向を調べるために行われました。年齢別のコンタクトレンズ処方割合を下に示します。

  • 15~19歳: 16%
  • 20~24歳: 18%
  • 25~29歳: 16%

-6.75D以下の近視患者の10%はコンタクトレンズを処方されていました。男女比はどの年齢グループでも同じでした。

Visual Performance and Optical Quality with New Silicone-hydrogel Soft Contact Lenses for Keratoconus
円錐角膜用の新しいシリコーンハイドロゲルレンズの見え方と光学的な質
Asaki Suzaki, Osaka University, Japan 

円錐角膜は従来の眼鏡やソフトコンタクトレンズでは矯正ができない高次収差を発生させます。この研究で、円錐角膜で発生する高次収差の一つ、垂直方向のコマ収差を矯正できる新しいシリコーンハイドロゲルレンズを作りました。数種類のあらかじめ設定されたレンズ度数を用い、37名50眼の軽度の円錐角膜においてこのレンズの装用試験をしました。新しいレンズは、従来のコンタクトレンズと比較して、視力と自覚的な見え方が少し向上し、垂直方向のコマ収差と全高次収差の大きさを低減していました。彼らは球面度数や円柱度数だけではなく高次収差までも矯正できるソフトコンタクトレンズが作れる可能性を示しました。このようなレンズは円錐角膜や角膜に歪みがあるような患者に特に有用でしょう。

Visual Performance and Residual Aberrations in Keratoconus Subjects Wearing Custom Scleral Contact Lenses
カスタムメイドの強膜コンタクトレンズを装用した円錐角膜患者の視覚特性と残余収差
Jason Marsack, University of Houston, USA

強膜コンタクトレンズにより円錐角膜眼の高次収差矯正の実現可能性を試験しました。3名6眼に対して2種類のカスタムメイドの強膜コンタクトレンズを設計しました。1つは従来のデザインで低次収差(球面度数、円柱度数)のみを矯正し、2つ目は低次収差と高次収差の両方を矯正できるようカスタマイズされたレンズです。円錐角膜を眼鏡で矯正するよりも従来デザインの強膜レンズのほうが良好な矯正ができますが、カスタマイズされたレンズはより良好な光学特性と視覚を得ることができます。この研究は高次収差を矯正するようデザインされたカスタムメイド強膜レンズの利点を示しました。

他の研究によると、野外活動や光により多く当たることが近視進行の危険性を減少させることも証明されています。子どもの近視進行を抑制するためにも積極的に野外活動に参加させるべきでしょう。また、毛様体麻痺を起こさない程度に薄めたアトロピンなどの薬剤を使用することで近視の進行を抑制できる可能性についても述べていました。Dr. Holdenはコンタクトレンズ装用による角膜感染症についても簡単に話されました。Dr. Holdenはすべての近視の小児に中心に遠用光学部のあるマルチフォーカルコンタクトレンズを装用させるか、近視進行を抑制する他の方法を施行するべきだと強調して話されていました

Japan Contact Lens Society (JCLS) invited lecture

日本コンタクトレンズ学会招待講演

Myopia Control – The Best Way Forward. Contact Lens Related Infection
近視抑制 - 将来に向けて最適な方法、 コンタクトレンズ関連感染症
Dr. Brien Holden

今年の日本コンタクトレンズ学会においてDr. Brien Holdenの招待講演がありました。Dr. Holdenの講演は当然英語でしたので、今月のニュースレターに要約を書きます。

Dr. Brien Holdenはコンタクトレンズの専門家として日本でも有名な先生です。約30年間に度々来日して講演を行っています。Dr. Holdenはオーストラリアのニューサウスウェールズ大学のオプトメトリの教授で、世界的に有名なコンタクトレンズの研究者でもあります。オーストラリアにCornea and Contact Lens Research Unit (CCLRU)を設立し、長年にわたり運営してきました。また、世界中で失明や視覚障害を防ぐための国際的な組織でも活躍されています。今回の講演は近視の問題について話されました。

近視は視力障害や失明の主要な原因の一つですし、世界的に見ると増加の傾向にあります。特にアジア諸国ではその傾向が顕著です。世界の人口の22%は近視であり、2030年までに30%程度まで増加するといわれています。台湾では18歳の90%以上が近視です。そして、強度近視の割合は急激に増加しています。悪いことに、世界の近視人口の半数は眼鏡を持っていません。このことは社会的、経済的に大きな問題になってきています。

Dr. Holdenは講演の中で、網膜上での遠視性の焦点のずれが眼軸長を伸長させ近視を進行させる刺激になるというDr. Earl Smithの研究について述べました。近視の進行は、反対に近視性の焦点のずれ、特に網膜周辺部での焦点のずれが眼軸長の伸長と近視進行を遅らせます。

通常のコンタクトレンズは網膜中心窩にクリアな焦点を結ばせますが、網膜周辺部では網膜後方に結像(遠視性の焦点のずれ)させてしまうので、近視進行を促進させてしまいます。それに対してマルチフォーカルコンタクトレンズは網膜周辺部に近視性の焦点のずれを生じさせます。これは理論的には近視進行を抑制させます。最近の研究でこの理論に対する試験を行い、マルチフォーカルコンタクトレンズを装用した小児が比較対照群と比較して本当に近視の進行が有意に抑制されることを確認しました。Dr. Holdenは近視の小児は中心部遠用のマルチフォーカルコンタクトレンズを装用させることを推奨していました。オルソケラトロジーを装用させても同様の効果を得ることができます。

他の研究によると、野外活動や光により多く当たることが近視進行の危険性を減少させることも証明されています。子どもの近視進行を抑制するためにも積極的に野外活動に参加させるべきでしょう。また、毛様体麻痺を起こさない程度に薄めたアトロピンなどの薬剤を使用することで近視の進行を抑制できる可能性についても述べていました。Dr. Holdenはコンタクトレンズ装用による角膜感染症についても簡単に話されました。Dr. Holdenはすべての近視の小児に中心に遠用光学部のあるマルチフォーカルコンタクトレンズを装用させるか、近視進行を抑制する他の方法を施行するべきだと強調して話されていました。

Basic clinical techniques

基本的臨床テクニック - 涙液膜破壊時間(TBUT; Tear Break Up Time)

臨床的にドライアイを評価する検査方法に涙液膜破壊時間(TBUT; Tear Break Up Time)があります。これは角膜上の涙液の質と安定性を見るためのものです。TBUTは以下の手順で行います。

1. 微量のフルオレセインを結膜上に点眼します。(アメリカでは乾燥した紙片にフルオレセインをしみこませたものを使います。その紙片に生理食塩水かコンタクトレンズ用剤を1滴落とし紙片を湿らせ、それを結膜にやさしく触れるようにします。その時、角膜に直接触れないように注意します。)

2. 細隙灯顕微鏡(スリットランプ)で角膜を観察します。光源にブルーフィルタを使用し、角膜全体を照らします。細隙灯顕微鏡の対物レンズの前にイエローフィルタを使用する人もいます。イエローフィルタを使用すると黄色の染料のコントラストが増します。

3. 涙液がフルオレセインを含んでいますので、角膜上の涙液膜は青い光を当てることで緑色に見えます。患者に2~3回瞬目をさせた後、眼を開けたままにするよう指示し、正面視させます。

4. 涙液膜の観察を続けて、緑色の涙液膜の中に黒い点が出現してくるまで何秒かかるかを数えます。この黒い点が、涙液膜破綻のサインです。

5. 最後の瞬目から黒い点が出現するまでの時間(秒)が涙液膜破壊時間(TBUT)です。正常な眼ではTBUTは5秒以上です。5秒よりも早い場合にはドライアイの可能性があります。

6. 反対の眼も同様に検査します。

このTBUTの検査手順はドライアイ研究会(Dry Eye Workshop)の報告書の7章に書かれています。ドライアイを診断して、治療する方法は付録7に書かれています。この報告書は8つの言語(英語、フランス語、イタリア語、ペルシャ語、中国語、ドイツ語、日本語、スペイン語)に翻訳されており、オンラインでも読むことができます。

http://www.tearfilm.org/tearfilm-reports-dews-report.php

(翻訳: 小淵輝明)

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