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NEW CLINICAL INSTRUMENT – THE VMAX PSE REFRACTOR

今年の初めころ、私は自覚的屈折検査をするための新しい検査機器を見ました。それはVmax PSFレフラクターというものです。アメリカのオプトメトリストのほとんどは自覚的屈折検査を患者に視力表を見せながらフォロプタ-のレンズを調節することによって行っています。患者に視力表を見せる代わりに、Vmax PSFの点視標を見せて、見え方が最適になるようにレンズを使って調整します。光学の分野では、点光源から光学機器を通った像のことをPoint Spread Function (PSF)と呼び、光学的な質の評価に用いられます。Vmax PSFのユニークな点にレンズ度数の調節法が挙げられます。それは球面や円柱レンズを交換して行うのではなく、等価球面度数と2つのジャクソンクロスシリンダーを調整して行うものです。この機器のメーカーは、Vmax PSFは従来の屈折検査法よりも5倍正確な測定方法であり、より早くより効果的に測定が出来ると言っています。

図1.Vmax PSF卓上型レフラクター

CASE REPORT

症例報告:乱視と老視のある強度近視症例
ほとんどの患者にとって屈折異常をコンタクトレンズで矯正することは有益なものです。しかし次のような要素が入ってくると少々複雑になってきます。

  • 強度の屈折異常
  • 乱視
  • 老視

高い屈折異常による弊害

患者の屈折異常が強度の近視や遠視の場合、コンタクトレンズが処方できないことがあります。処方できる度数が制限されているのです。また、屈折異常が強度の場合には頂点間距離の測定が重要になります。頂点間距離が少し異なっただけでもコンタクトレンズの度数が大きく異なってくるからです。

乱視による弊害

コンタクトレンズによる乱視の矯正にも制限があります。眼鏡と違ってコンタクトレンズは処方できる乱視度数や軸に限りがあるからです。乱視用のコンタクトレンズは軸を安定させるためにプリズムバラストやダブルスラブオフのような特殊なデザインにする必要があります。そのデザインによってレンズが若干厚くなる事があり、装用感や水濡れ性にも影響します。トーリックソフトコンタクトレンズはこの10年で著しい進化を遂げましたが、球面レンズと比較するとまだ手がかかるという印象があります。

老視の弊害

老視はコンタクトレンズを処方する人にとってまだ課題があります。ハードコンタクトレンズにもソフトコンタクトレンズにもマルチフォーカルレンズがあり、製品によって様々なデザインが採用されています。老視に対する処方にはマルチフォーカルレンズの他に、モノビジョンや眼鏡による矯正、またはそれらの組み合わせが考えられます。

老視の人の見え方の質にはたくさんの要素が関係してきます。照明、瞳孔径、見る対象物の高さや位置などです。多くのマルチフォーカルレンズが開発されてきましたが、現時点では、老視ではない若い人のように全ての距離で鮮明な像が得られる状態までには至っていません。

この記事ではこれらの三つ全ての要素を持った人に対する処方について報告します。

背景

患者は59歳の大学教授で40年以上コンタクトレンズを装用しています。酸素を通さないPMMAレンズや酸素透過性ハードコンタクトレンズも使っていましたが、この15年はトーリックソフトコンタクトレンズを使用しています。彼の最新のコンタクトレンズ処方データは、

R) S-9.50D C-1.25D Ax.180 Biofinity toric
L) S-9.50D C-1.25D Ax.180 Biofinity toric

このコンタクトレンズ処方はモノビジョンで処方されています。右眼は1.00D低矯正になっており、左眼は1.75D低矯正です。オフィスのような場所ではほとんど満足できる見え方が得られているようですが、遠方は若干ボケます。遠方をはっきり見る必要がある場合にはコンタクトレンズの上に眼鏡を使用しています。その眼鏡度数は、

R) S-1.00D
L) S-1.75D

最近、この患者は以前よりも遠方、近方ともに見え方が低下していると感じるようになってきました。

新たな臨床データ

コンタクトレンズの検査のためにクリニックに来たときに測定した自覚的屈折検査の結果を見ると、近視がさらに進行し、乱視も若干変化しており、老視も進んでしました。

R) S-14.00D C-1.50D Ax.177
add +2.00D
L) S-14.50D C-1.50D Ax.33
add +2.00D

頂点間距離を14mmでコンタクトレンズの度数を計算すると、

R) S-11.71D C-1.03D Ax.177
L) S-12.05D C-1.02D Ax.33

図2.患者の屈折度数の頂点間距離補正

トーリック・マルチフォーカルシリコーンハイドロゲルレンズがあれば、それが理想的な選択です。しかし、この患者が好きなバイオフィニティトーリックには-10.0Dを超える球面度数がありませんし、トーリックとマルチフォーカルの両方の機能を持つレンズはありません。

他の選択肢

  • モノビジョン
  • Proclear Multifocal Toric
  • マルチフォーカルハイブリッドレンズ(中央部がハード、周辺部がソフト素材のコンタクトレンズ)
  • マルチフォーカルハードコンタクトレンズ
  • 眼鏡

モノビジョン: モノビジョンは初期の老視には良い選択になります。しかし59歳の患者にモノビジョンを処方しても全ての距離で満足な視力が得られることはありません。

Proclear Multifocal Toric: このレンズはアメリカで購入できる数少ないマルチフォーカルトーリックレンズです。しかし球面度数が-6.50Dまでしかありません。また、プロクリア は水濡れ性に優れたハイドロゲルレンズですが、患者はBiofinityのようなシリコーンハイドロゲルレンズを望んでいます。強度近視用のソフトコンタクトレンズは周辺部が厚くなってしまいやすいので、高い酸素透過性が重要だからです。

マルチフォーカルハイブリッドレンズ: マルチフォーカルハイブリッドレンズのDuette Multifocalを試してみました。このレンズはレンズ中央部がマルチフォーカルのハードコンタクトレンズになっていて、周辺部がシリコーンハイドロゲルで出来ています。理論的にはハードコンタクトレンズの優れた光学特性とソフトコンタクトレンズの快適性を併せ持つレンズなのですが、実際には十分な見え方も快適な装用感も得られませんでした。

マルチフォーカルハードコンタクトレンズ: 患者はソフトコンタクトレンズの装用感に慣れてしまっているので、ハードコンタクトレンズを希望しませんでした。

眼鏡: 場合に応じて眼鏡も使用しているが、普段の使用にはソフトコンタクトレンズを希望しています。強度近視の場合、眼鏡で矯正しようとすると厚さや重さが問題になります。

  • 見た目の問題
  • 重い眼鏡は時間とともに不快になってきます。
  • 重い眼鏡は鼻からずれてしまいます。そうすると、頂点間距離が変化して遠くが見えにくくなります。
  • 累進屈折レンズの場合、歪のない光学部分は非常に狭いです。
  • 活動的なスポーツには不向きです。

最終処方

最終的には、若干弱めに合わせた球面のシリコーンハイドロゲルレンズと眼鏡(コンタクトレンズの度数を補完する球面度数と乱視、さらに老眼を矯正するもの)を処方しました。

コンタクトレンズ

R) S-10.50D Biofinity
L) S-10.50D Biofinity

眼鏡(SCL上)

R) S-1.50D C-1.00D Ax.177
add +2.00D
L) S-2.00D C-1.00D Ax.33
add +2.00D

この組み合わせであれば、他の選択肢よりも多くの利点があります。

図3.この組み合わせで強度近視と乱視、老視の全てを矯正します。

球面ソフトコンタクトレンズ

近視の大部分を球面ソフトコンタクトレンズで矯正しました。レンズ種類も素材も広い範囲から選択できます。Biofinityでは-10.50Dも製作範囲内です(-20.00Dまで可能)。患者は1日使い捨てレンズを選択することも可能です。
球面ソフトコンタクトレンズはトーリックレンズよりも薄く出来ているので、装用感も良いです。また、酸素透過率も高くなりますので、特に強度近視の場合には安全性が高まります。
また、球面ソフトコンタクトレンズはトーリックレンズよりも安いことも魅力ですし、クリニックにほとんどの度数のストックがあります。度数が変更になったときなど、簡単に対応することができます。トーリックレンズの場合には、欲しい度数がなかったり、注文しても届くまでに時間がかかったりすることがあります。

コンタクトレンズで近視のほとんどを矯正する利点

コンタクトレンズで近視のほとんどを矯正していると、残った近視や乱視を簡単に正確に測定できます。この症例では-10.50Dをコンタクトレンズで矯正して、残った屈折異常はコンタクトレンズを装用した状態で測定しました。屈折値が弱ければ、頂点間距離による影響も小さくなります。もし、約-14.00Dの近視患者の屈折検査をする場合、頂点間距離が±4.0mmずれると、コンタクトレンズ度数は約0.5Dずれることになります。患者の顔の向きや位置によってフォロプターで測定していても10mm程度ずれることがあります。その場合には1.0D以上の誤差になってしまいます。
また、コンタクトレンズで近視の大部分を矯正した上から屈折異常を測定すると、眼鏡レンズだけで屈折検査をするよりも網膜の像が大きくなります。マイナス度数の強い眼鏡レンズはマイナス度数の強いコンタクトレンズよりも網膜像が小さくなるからです。自覚的屈折検査をするときに患者はより視標を見やすくなり、矯正視力をより正確に測定することが出来ます。

眼鏡による残った近視と乱視、老視の矯正

乱視の矯正を眼鏡で行う場合、矯正する度数や軸のコントロールは簡単にできます。眼鏡ではトーリックソフトコンタクトレンズと違って軸が回転するということがないからです。 老視の矯正では、眼鏡を使用すると選択肢は広がります。また、累進屈折の位置などの調整もできます。見え方の質も累進屈折眼鏡のほうがマルチフォーカルソフトコンタクトレンズよりも良いことが多いです。この症例では、Zeissのプレミアム累進屈折レンズを使用しました。そのレンズは視野が広く、どの距離でも鮮明に見えて、歪みが非常に小さいです。
コンタクトレンズで近視の大部分を矯正していますので、コンタクトレンズ上にかける眼鏡は度数が弱く、薄型で軽量です。コンタクトレンズの度数は故意に弱めにしてありますので、眼鏡をはずせば、机やコンピュータ作業に向いた屈折状態になります。この患者は仕事中にはコンピュータでの作業が多いので、眼鏡をはずしてコンタクトレンズだけで過ごすことができます。

まとめ
強度近視と乱視、老視もある患者の屈折矯正には独創的な方法が必要でした。近視のほとんどを矯正するシリコーンハイドロゲルを処方し、残った近視と乱視、老視をコンタクトレンズ上にかける眼鏡で矯正しました。この方法を用いることでコンタクトレンズ単体での矯正よりもいくつかの利点があります。

BASIC CLINICAL TECHNIQUES: STENOPAIC SLIT

アメリカのオプトメトリストが最初に乱視を測定するには、レチノスコープかオートレフラクトメータを用いて行います。その後、ジャクソンクロスシリンダー (JCC) を用いて、乱視度数と軸を正確に測定します。JCCの測定方法はニュースレターの2013年の9月号で説明しました。JCCはほとんどの患者で正確な測定が出来ますがJCCではうまく測定できない症例もあります。そのような場合には、乱視を測定するのに他の測定方法を検討する必要があります。ニュースレターの2014年8月号で紹介した乱視表を用いた方法や2014年9月号で紹介したケラトメトリーを用いた角膜乱視の測定などです。今回説明するのは、図4に示した掛け枠に入れるスリットを用いた方法です。

図4.スリット

測定手順
スリットを用いた乱視軸の検査は次の手順で行われます。

  1. レチノスコープやオートレフラクトメータ、古い眼鏡の検査などを参考にして、だいたいの屈折状態を把握しておきます。
  2. 1で得られた度数のレンズを掛け枠に入れて、視力を測定します。
  3. 円柱度数のレンズを抜き、視力が0.5以下になるようにプラスの球面レンズを追加します。患者の視力がすでに0.5以下であったら、さらに+1.00D追加します。未矯正の乱視の両焦線を網膜よりも前に移動させるのです。(図5)
  4. 掛け枠にスリットを挿入して、患者に最良の見え方になるようにスリットを回転させてもらいます、最良の視力が得られた位置がマイナスシリンダーの軸になります。
  5. スリットを掛け枠から抜き、マイナスシリンダーレンズを視力が向上するまでゆっくりと追加していきます。JCCを用いて円柱度数を確認します。

このスリットを用いる方法はアメリカのオプトメトリストの間でもすでに忘れられた方法です。しかし、素早く、簡単に、正確にマイナスシリンダーの軸を確認する方法です。

直乱視の例

(翻訳: 小淵輝明)

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