HYDROGEN PEROXIDE DISINFECTION SYSTEMS

MPS

前回のニュースレター(2013年9月)の中で、最新のマルチパーパスソリューション(多目的用剤: MPS)についてまとめました。アメリカのソフトコンタクトレンズ(SCL)使用者の90%以上がMPSを使用しています。それはMPSが簡単で便利だからです。MPSは次の項目を満たすように設計されています。

  • 洗浄
  • 消毒
  • すすぎ
  • 保存 (親水化なども含む)

前回は4種類の最新のMPSを紹介しました。

  • Opti-Free RepleniSH  (Alcon)
  • Revitalens Ocutec  (AMO)
  • Opti-Free PureMoist  (Alcon)

Biotrue  (Bausch + Lomb)

  • いろいろなケア用剤の間に何か違いがあるのか、それともみんな同じなのか。
  • 単純に価格で考えて、安いものを買えばよいのか。
  • もしケア用剤に違いがあるのなら、自分にはどれが合っているのか。

各メーカーは新しいMPSを開発するために数年にわたり研究開発に投資してきました。ここに挙げたMPSは、消毒効果を向上させるために消毒成分が1種類ではなく2種類入っています。また、これらはシリコーンハイドロゲルとの相性もよく、これまでのMPSよりも親水性の成分を多く含んでいます。わたしは4種類とも使用したことがあり、快適性が向上したことは実感しました。特に、AlconのOpti-Free PureMoistとBausch+LombのBiotrueは良かったです。したがいまして、私が患者に勧めるのはこれらのMPSです。

過酸化水素消毒

MPSは便利で人気がありますが、過酸化水素消毒など他の選択肢にも勧められる理由がありあます。過酸化水素消毒は市販の消毒剤の中では最良のもののひとつで、MPSよりも優れていると多くの医師は考えています。3%の過酸化水素に6時間さらせば細菌、ウィルス、真菌、アメーバなどの微生物は死滅します。アカントアメーバは角膜感染症の病原生物の中でもっとも危険で死滅させることが難しいもののひとつです。アカントアメーバは栄養体という活動形かシストという殺すことが困難な休止形で存在していますが、3%の過酸化水素に6時間さらすことで栄養体はもちろんシストも殺すことができます。アメリカには2種類の過酸化水素消毒剤があります。

  • Oxysept UltraCare (AMO)
  • Clear Care (Alcon)

アカントアメーバの栄養体(左)とシスト(右) (社員提供:Charles T. Campbell Laboratory :eyemicrobiology.upmc.com)

過酸化水素消毒剤の使用方法 

MPSの使用方法は非常にシンプルですが、過酸化水素消毒剤は下に書くようにMPSより少々手順が多いです。

  • SCL用の洗浄液を用いてこすり洗いとすすぎを行います。
  • レンズケースにSCLを収納します。
  • レンズケースに過酸化水素消毒剤を満たします。
  • 中和剤をレンズケースに入れます。過酸化水素は中和しなければ目に刺激のある物質です。(Clear Careはケース内にある白金ディスクにより中和されます。)
  • 液内に6時間以上浸漬させます。過酸化水素が微生物を殺すのと同時に、中和剤が徐々に過酸化水素を水と酸素に分解します。
  • 消毒後のSCLを装着する前に生理食塩水ですすぎます。

過酸化水素消毒剤のメリット

  • 高い消毒効果
  • 防腐剤を含みませんので、防腐剤による眼障害の心配が要りません。
  • 発生する気泡がたんぱく質の付着を軽減します。
  • MPSから切り替えた患者は、SCLが以前よりきれいになり、快適になったと感じます。
  • 中和後、過酸化水素は水と酸素に分解されますので、眼組織に対して無毒になります。

過酸化水素消毒剤のデメリット

  • 過酸化水素の消毒システムは少し複雑です。SCL用洗浄液、生理食塩水、中和剤または中和ディスクなど複数のものを用い、いくつかのステップも必要としますので、MPSより少し複雑になります。
  • MPSよりも少し複雑な手順になりますので、コンプライアンスも悪くなる可能性があります。
  • 中和を忘れた場合、SCL装着後に目に強い刺激があります。
  • 消毒と中和に6時間必要ですので、すぐに消毒して使うということができません。たとえば、患者が短時間SCLをはずして、再装用する場合にはMPSを使うしかありません。

中和後には水と酸素に分解されますので、消毒効果は持続しません。中和後に微生物が入りこむことがあれば、微生物は液中で容易に増殖してしまいます。したがって、過酸化水素消毒は長期間の保管には不向きです。

ワンステップとツーステップ

OxyseptとClear Careは、ワンステップのシステムになります。つまり、Oxyseptの中和剤は消毒剤と一緒に入れますし、Clear Careの白金ディスクはあらかじめセットしてあります。ワンステップシステムは、消毒後に中和をするツーステップシステムよりも便利で簡単です。ツーステップシステムでは中和される前の過酸化水素で消毒ができますので、理論的にはワンステップのシステムよりも殺菌効果が強いはずです。しかし、患者はときどき中和を忘れてしまいます。ワンステップシステムでは、消毒開始とともに中和剤が働き始め、徐々に分解が進み、それに伴い消毒効果も徐々に減衰していきます。それゆえ、OxyseptやClear Careなどのワンステップの過酸化水素消毒システムはアカントアメーバのシストには完全な効果が期待できません。このため、ワンステップの過酸化水素消毒システムは新しいMPSよりも効果が弱いと考える医師もいます。理論的にツーステップのほうが高い消毒効果が得られるのですが、ほとんどの患者にとって複雑すぎるためにコンプライアンスがあまり良くありません。そういった理由で、主要なメーカーはツーステップの過酸化水素消毒システムをアメリカ国内で市販していません。Oxyseptを中和剤を6時間の消毒後に入れるというようにツーステップで使用することは可能ですが、多くの人にとって面倒すぎるでしょう。

最も良い消毒システムは?

私の働いているNortheastern State University のコンタクトレンズ講座の教授、Dr. Latricia Packにお勧めのSCL消毒システムはどれなのかを聞いてみました。彼女は、ほとんどの患者に新しいMPSを勧めるそうです。ただし、過敏症や防腐剤に対するアレルギー、ドライアイなどがある場合には過酸化水素消毒システムを勧めるとのことです。また、患者がMPSを使い始めた後に刺激などを感じた場合、過酸化水素消毒システムに変更させるそうです。

Dr.Latricia Pack NSUのコンタクトレンズ講座の教授
Dr. Packの 講義ノートを参考人させていただきました。

CONTACT LENS NEWS

Biofinity XR (海外におけるBiofinityの度数拡大)

CooperVisionは、シリコーンハイドロゲルレンズのBiofinityの度数範囲を広げた、”Biofinity XR” を発表しました(2013年10月21日)。Biofinity XRにより、+8.50D~+15.00.Dおよび-12.50D~-20.00Dまでが処方可能になります。Biofinityには乱視矯正用のトーリックレンズと老眼矯正用のマルチフォーカルレンズもあります。

新しい1日使いすいてシリコーンハイドロゲルレンズ

CooperVisionは、1日使い捨てのシリコーンハイドロゲルレンズ、”MyDay” をヨーロッパ市場に向けて発表しました。MyDayはUVカット機能があり、UVAの75%、UVBの99%をカットします。アメリカ市場には2014年の1月に発売予定です。アメリカでは、現在TruEye(J&J)とTotal1(Alcon)の2種類の1日使い捨てシリコーンハイドロゲルレンズが販売されています。

CooperVisionのコンタクトレンズが賞を受賞

イギリスのバーミンガムで2013年4月13日に行われたOptician Awards 受賞式において、 CooperVisionの1日使い捨て遠近両用ソフトコンタクトレンズ、”Proclear 1Day Multifocal” が、”コンタクトレンズ製品 Of The Year”を受賞しました。CooperVisionは、「このコンタクトレンズは、1日使い捨ての便利さを求める老視患者にとっての理想的な解決策になるでしょう」とプレスリリースで発表しました。

B+Lの新しいシリコーンハイドロゲル遠近両用レンズ

B+Lは新しいシリコーンハイドロゲル遠近両用レンズ、”PureVision2 Multi-Focal”を発表しました。これは、光学部中心が近用度数で非球面デザインの累進屈折型の遠近両用レンズです。

B+Lが新しいシリコーンハイドロゲルレンズを発表

B+Lは新しいシリコーンハイドロゲルレンズに関する承認をFDAより受けました。しかし、プレスリリースではまだレンズ名は明らかにされていません。B+LのMPSであるBiotrueを使用して機能するMoistureSealテクノロジーを採用しています。また、アメリカ市場への発売日などについても明らかにされていません。

世界中で”瞬き”を促すためのミュージックビデオ

涙液膜・光学面学会(The Tear Film & Optical Surface Society: TFOS)は、瞬きの重要性を世界中に広めるためイタリアのポップス歌手Sabrinaさんと協力しあいミュージックビデオを制作しました。このミュージックビデオには、”Blink Around the World” の曲に合わせて瞬きをする世界中の人々が出演しています。このミュージックビデオはiTunes Storeから購入することができます。ビデオの中で画像がぼやけることがありますが、人々の瞬きで鮮明になります。このミュージックビデオはTFOSのウェブサイト (http://www.tearfilm.org) や YouTube (http://www.youtube.com/watch?v=XaXfw50y0nA) で見ることができます。

SUMMARIES OF RECENT ARTICLES

Optometry and Vision Scienceの11月号は近視の特集でした。マルチフォーカルソフトコンタクトレンズを用いて近視進行をコントロールするという記事がいくつか掲載されていました。

マルチフォーカルコンタクトレンズを用いた近視のコントロール (p. 1207-1214)
Multifocal Contact Lens Myopia Control
Jeffrey Walline, OD, PhD

以前の研究では、マルチフォーカルソフトコンタクトレンズが近視進行を遅らせるということが示されました。しかし、その研究で使われたのは市販のコンタクトレンズではなく実験的に作られたコンタクトレンズでした。この研究の目的は、市販のマルチフォーカルソフトコンタクトレンズでも効果があることを確認することです。近視度数が-1.00~-6.00で1.00D以下の乱視の8~11歳の小児40名がこの研究に参加しました。そして、CooperVisionのProclear Multifocal(注: 日本で売られているプロクリア ワンデー マルチフォーカルではありません。ロート社のiQ14マルチフォーカルと同一デザインのレンズです)のDタイプ、加入度+2.00Dのレンズを処方し、2年間経過観察しました。彼らは、レトロスペクティブに集めた単焦点のソフトコンタクトレンズを使用している同年代の小児のデータと今回の被験者のデータを近視の進行について比較しました。2年後、マルチフォーカルソフトコンタクトレンズを使用した群は単焦点ソフトコンタクトレンズを使用した群より有意に近視の進行が遅く(マルチフォーカル群-0.51Dに対して単焦点群-1.03D)、眼軸の伸長もマルチフォーカル群が有意に少ない結果でした(マルチフォーカル群0.29mmに対して単焦点群0.41mm)。この研究では、光学中心が遠用度数のマルチフォーカルソフトコンタクトレンズ近視の進行を50%遅らせたことになります。

球面およびマルチフォーカルソフトコンタクトレンズによる周辺部のデフォーカス (p. 1215-1224)
Peripheral Defocus with Spherical and Multifocal Soft Contact Lenses

David A. Berntsen, OD, PhD
最近の研究により、遠視性のデフォーカス(焦点が網膜後方にずれた状態)、特に網膜周辺部分のデフォーカスが若年者の眼軸を伸長させる刺激になり、近視を進行させる原因になるということがわかってきています。この研究の目的は、次の2種類のソフトコンタクトレンズによる網膜周辺部のデフォーカスを測定することです。

  1. 光学中心が遠用度数のマルチフォーカルソフトコンタクトレンズ(Biofinity Multifocal, D lens, add+2.50D)
  2. 単焦点ソフトコンタクトレンズ (Biofinity)

近視の若年者25名に両方のコンタクトレンズを装用させ、被験者の屈折状態を網膜の耳側40°から鼻側40°まで10°ごとに測定しました。遠くのものを見るとき、マルチフォーカルコンタクトレンズは網膜周辺部に近視性のデフォーカス(網膜前方に焦点がずれた状態)が発生しましたが、単焦点ソフトコンタクトレンズでは網膜周辺部で遠視性のデフォーカスが発生していました。マルチフォーカルソフトコンタクトレンズは近視の進行抑制により良いことになります。この研究により、近視進行の抑制を目標とする場合に、光学中心が遠用度数のマルチフォーカルソフトコンタクトレンズが有効であることを示しました。

オルソケラトロジーによる近視進行防止ための要素 (p. 1225-1236)
Factors Preventing Myopia Progression with Orthokeratology Correction
Jacinto Santodomingo-Rubido

オルソケラトロジーは小児の近視進行を遅らせるもうひとつの方法です。この研究の目的は、単焦点の眼鏡を使用している小児と比較して、オルソケラトロジーレンズを使用している小児のどの要素が眼軸の伸長を遅らせているのかを確認することです。オルソケラトロジーレンズを処方された小児31名が対象で、2年間経過観察しました。眼鏡使用群は30名で同様に経過観察しました。オルソケラトロジーレンズ使用群で有意に近視の進行を遅らせた要素は、

  • 女性
  • 年長児
  • 両親の近視が弱い
  • 近視が弱い、あるいは研究前の近視進行が遅かった
  • 前房深度が深い
  • 角膜が縦長楕円で角膜の屈折力が強い
  • 虹彩、瞳孔の径が大きい

この結果は、医師が近視進行の抑制を目的としてオルソケラトロジーレンズを処方する際により効果が期待できる患者を選択するのに役立つものであると考えられます。

BASIC CLINICAL SCIENCE – CORRELATING CLINICAL DATA

オプトメトリーの学生はどのようにして多くの臨床検査を行うのかを学んでいます。教授の監督下、彼らはすべての行程において習熟度を示した後、クリニックで患者を検査することを始めます。私がクリニックに不慣れな学生に教える原理原則のうちの一つは、さまざまな検査から得られた臨床データを比較し関係付けることです。たとえば、次の検査をすべて同時に行い、同じ診断になるのか、ということを考えます。

  • 視覚の訴え(右/左、遠方/近方)
  • 視力(未矯正、古い眼鏡で矯正)
  • 屈折(古い眼鏡、新たに測定した屈折)

クリニックに不慣れな学生はさまざまな検査を別々に行い、それらの結果を比較したりしません。検査結果を比較することは以下の点において重要です。

  • 診断が正しいか確認する
  • 臨床データの中に間違いの可能性を知らせる

例として、左眼より右眼の遠方視が悪いと訴えてクリニックに来た大学生の場合を考えて見ましょう。表1の臨床データを見てください。

表1に示した例では、右眼だけ近視が進行して度数が変化していることを示しています。このことは左眼よりも右眼の近視が強いという診断を裏付けています。

それでは、不慣れなオプトメトリーの学生が(右眼の屈折値だけ表1と異なる)表2に示したような結果を持ってきたとしたらいかがでしょう。

新たに測定した右眼の屈折値が他のデータと相関していないことがわかります。もし本当に右眼の屈折値が-3.00Dならば、古い眼鏡を装用した矯正視力はもっと良いはずですし、裸眼視力も同程度になるはずです。患者自身も左眼より右眼が若干ぼけるという訴えをしなかったでしょう。この右眼の屈折値は他の臨床データを否定していますので、右眼のデータが間違っている可能性を考え、再測定する必要があります。

再測定を行い、両目とも屈折値が-3.00Dであることがわかったとしたらいかがでしょう。あなたは、右眼の視力不良を説明するために他の診断を考慮する必要があります。これが屈折異常によるものではないならば、他の要因、たとえば右眼に病気がある可能性についても考える必要があります。

この例で、左右眼のデータを比較して関連性を考えました。しかし、他にも遠方と近方の視力、年齢と視覚の訴え、不満を感じる時間帯、そして普段の状態に影響を与えるすべての臨床データについて相関を考えなければなりません。これは医師が臨床経験から得るべきスキルです。

(翻訳: 小淵輝明)

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