Association for Research in Vision and Ophthalmology (ARVO)

5月5日(日)
ポスターセッション:ドライアイと涙腺1

A New Paradigm for the Structure of the Tear-Film Lipid Layer
涙液膜油層構造の新しいパラダイム
Clayton Radke, University of California-Berkeley, USA

ヒトと牛から採取したマイボーム腺脂質の微細構造について様々な方法で研究しました。その結果、涙液膜油層の微細構造はこれまで考えられていたものとは異なるものであると結論づけました。彼らは、涙液膜油層は微細な結晶を含む高粘弾性懸濁液で構成されているとしました。タンパク質と界面活性剤の様に極性のある脂質は脂質層の脂質/水の境界付近に存在します。

Association of Dry Eye Disease with Physical Activity and Sleep Quality: Osaka Study
ドライアイと身体活動、睡眠の質の関係: Osaka Study
Motoko Kawashima, Keio University, Japan 

研究者らは、約400名の被験者に対して身体活動(国際身体活動調査票(IPAQ)を用いました)および睡眠の質(ピッツバーグ睡眠指数(PSQI)を用いました)について調べました。400名の被験者は、1)ドライアイ群、2)ドライアイ疑い群、3)正常群に分けられました。その結果、正常群が身体活動が活発で、良質な睡眠をとっていることがわかりました。研究者たちは、身体活動がドライアイの危険性を低減するのではないかと考えました。 

Effects of Computer Usage on Tear Film Osmolarity and Precorneal Tear Film Thickness
涙液膜の浸透圧および角膜表面の涙液膜の厚さに対するコンピュータ使用の影響
Stephanie Chu, Weill Cornell Medical College, USA

コンピュータ使用がドライアイ症状を増悪させることはよく知られています。この研究では、長時間のコンピュータ使用の影響を調べるために、20名の被験者に対して、ドライアイに対する2種類の他覚的試験を行いました。ひとつは、涙液浸透圧測定(TearLab)で、もうひとつは、OCTを用いた涙液膜の厚さ測定です。平均6.5時間のコンピュータ使用の後、涙液浸透圧は有意に増加しました(291→298 mOsmol / L)。しかし、涙液の厚さに有意な変化はありませんでした。

Factors Associated with Dry Eye: The Korean National Health and Nutrition Examination Survey 2010
ドライアイに関連する要因: 2010年韓国全国健康栄養検査調査
Tyler Rim, Yongsei University, Republic of Korea 

無作為に選出された5,726名を対象とした全国健康調査により、すべての眼科手術、女性であること、ストレス、高コレステロールがドライアイの危険性を高める要因であることがわかりました。一方、事務職よりも農業、漁業、林業に従事している人はドライアイのリスクが低いこともわかりました。

The Effects of Cosmetic Eye Pencil Application on the Tear Film and Ocular Surface
涙液および眼表面に対するアイペンシルの影響
Allison Ng, Cardiff University, UK 

この研究では24名の健康な女性を対象に、2種類のアイライナーの塗布方法が眼表面や涙液にどのように影響を与えるのかを調べました。ひとつは、眼瞼の睫毛より内側、目により近い部分に塗布する方法、もうひとつは、眼瞼の外側の縁に塗る方法です。7日後、眼瞼の内側への塗布は涙液膜が厚くなり、ドライアイ症状が増加しました。他のドライアイを示す指標、非侵襲的涙液破壊時間(NIBUT)や結膜充血などは塗布方法による有意な差はありませんでした。アイライナーのワックス成分や脂質成分は、アイライナーを眼瞼の睫毛よりも内側に塗られた場合により早く涙液に浸透してしまうのではないかと考えました。NIBUTや結膜充血などのドライアイの指標は、どちらの塗布方法の後であっても有意な差はありませんでした。

The Ocular Surface Sensory Response to Tear Film Instability With and Without a Contact Lens
コンタクトレンズ装用/非装用時の涙液膜安定性による眼表面の感覚反応
Carolyn Begley, Indiana University, USA 

コンタクトレンズを装用した場合としない場合で、目の不快感は涙液膜の不安定さによるものでしょうか?これを調べるために、10名を対象として、瞬目後あるいは最低30秒間目を開き続けたときの不快感を連続的に測定しました。コンタクトレンズをしていないときの不快感は、コンタクトレンズを装用しているときと比較して、急激に始まり、高いレベルに達しました。したがって、コンタクトレンズは涙液膜が破壊されて起こる不快感に対して保護的な役割を果たしているといえます。

The Relationship between Ocular Surface Epithelial Damage and Tear Abnormalities: Osaka study
眼表面の上皮障害と涙液異常の関係: Osaka study
Hiroaki Kato, Kyoto Prefectural University, Japan

179名(ドライアイ眼および健常眼)を対象に行った試験で、涙液メニスカスの曲率半径(涙液量の指標)、涙液膜の厚さ、フルオレセイン点眼後のBUT(涙液膜破壊時間、涙液膜の安定性の指標)、が角膜上皮障害の重要な要因であることを見つけました。結膜に関しては、涙液メニスカスの曲率半径と涙液膜の厚さも重要な因子でしたが、BUTよりもシルマー試験(涙点機能の指標)のほうが重要であるといえます。

5月6日(月)
論文セッション:収差、画像の質、視機能

Perceptual Learning after Correcting the Eye's Aberrations with Adaptive Optics
眼の収差を補償光学を用いて矯正した後の知覚の学習機能
Ramkumar Sabesan, University of Rochester, USA 

円錐角膜は大きな高次収差を発生させるため、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても十分な視力が得られません。しかし、補償光学を用いた完全矯正をしたとしても、円錐角膜眼は完全な視力を得られません。これは、脳が質の悪い像に適応してしまっているために良好な像に反応しないためです。2名の円錐角膜患者の悪いほうの眼に対して補償光学システムを用い5日間感覚抑制を訓練したところ、コントラスト感度と視力が両眼ともに有意に向上させることができました。訓練を受けていないほうの眼に対しても有効でした。補償光学システムを用いた矯正により、視覚が訓練されることがわかりました。

ポスターセッション: 近視 1

Thinning of Lens Thickness Might Be Responsible for Myopia Development
水晶体の菲薄化が近視進行の原因になる可能性
Ji He, New England College of Optometry, USA

最近の研究により、網膜周辺部の遠視性ボケが近視進行に寄与していることが示されています。仮定的計算に基づく模型眼を用いて、水晶体の厚さが薄くなり、前房深度が増加することにより周辺部の遠視化を引き起こすことを見つけました。しかし、前房深度が深くならなければ、遠視化は起こりません。

5月7日(火)
ポスターセッション:角膜手術の屈折

Flap-induced Aberrations for the LASIK Refractive Surgery
LASIKにおけるフラップが誘引した収差
Stan Bentow, AMO, USA

LASIK手術時におけるフラップの作成は高次収差を誘発する原因になることがあります。このことはLASIK手術を計画しているときに考慮する必要があります。フラップ作成のみにより誘発される収差の大きさは3つの方法で評価することができます。1)フラップを作成することによって(ただし、切除は実施しない)誘発された収差を測定する。2)矯正した等価球面度数を横軸に、球面収差を縦軸にプロットしたグラフの近似直線を引き、等価球面度数がゼロのときの球面収差の値。3)マイクロケラトームやフェムトセカントレーザーなどのフラップ作成方法、術者の技術、環境などの変数を考慮した数学モデルを作成します。

Microkeratome-related Complications in the First 10,000 LASIK
最初の10,000件のLASIK手術におけるマイクロケラトーム関連の合併症
Marcos Garcia, Sao Paulo University, Brazil

この研究では、一人の術者、同一方法、同一施設で1998年から2010年の間に行われた最初の10,000眼(5387名)に対するLASIK手術におけるマイクロケラトーム関連の合併症の数と傾向を分析しました。マイクロケラトームの合併症はLASIK手術の中止につながります。この期間内に53例(全体の0.53%)に合併症がありました。最初の1,000眼の合併症は、1.2%でしたが、最後の4,000眼については0.36%でした。これは、術者の学習効果の表れです。

Patient Satisfaction and Quality of Vision after Wavefront-guided (WFG) versus Wavefront-optimized (WFO) LASIK
Wavefront-guided (WFG) LASIKと Wavefront-optimized (WFO) LASIKの患者満足度と見え方の質(QOV)
Rose Sia, US Army, USA

この研究では、Wavefront-guided (WFG) LASIKを受けた18名とWavefront-optimized (WFO) LASIKを受けた17名の術後6ヶ月の高次収差のRMSを瞳孔径4~7mmの間で比較しました。WFGは術前の波面収差の測定結果を基に収差を最も少なくするように行うLASIKで、WFOは平均的な球面収差を矯正するように非球面形状に切除するLASIKです。両群の年齢と術前の屈折値はほぼ同じでした。この試験では、両群のRMS値(光学的な質)や患者満足度(視覚の結果)に有意な違いはありませんでした。

The Effect of Pterygium Surgery on Corneal Astigmatism
角膜乱視に対する翼状片除去術の影響
Clinton Duncan, University of Texas, USA

研究者たちの病院で3年間に翼状片手術を受けた82名92眼のデータをレトロスペクティブに調査しました。鼻側、耳側の両方の翼状片で平均角膜乱視は術後に有意に減少しました(3.46D→1.99D)。自覚的屈折検査での乱視度数も減少していましたが、有意な差ではありませんでした。翼状片の再発率は15.3%です。翼状片が大きな場合や過去に再発していた場合に、再発率も大きくなります。

Microkeratome-related Complications in the First 10,000 LASIK
最初の10,000件のLASIK手術におけるマイクロケラトーム関連の合併症
Marcos Garcia, Sao Paulo University, Brazil

この研究では、一人の術者、同一方法、同一施設で1998年から2010年の間に行われた最初の10,000眼(5387名)に対するLASIK手術におけるマイクロケラトーム関連の合併症の数と傾向を分析しました。マイクロケラトームの合併症はLASIK手術の中止につながります。この期間内に53例(全体の0.53%)に合併症がありました。最初の1,000眼の合併症は、1.2%でしたが、最後の4,000眼については0.36%でした。これは、術者の学習効果の表れです。

5月8日(水)
ポスターセッション:アイケア

iPhone Applications in Ophthalmology: Current Capabilities, Limitations and Future Directions
眼科領域におけるiPhoneアプリ:現在の性能と限界および今後の方向性
Nicholas Cheng, Royal Melbourne Hospital, Australia

最近の研究により、網膜周辺部の遠視性ボケが近視進行に寄与していることが示されています。仮定的計算に基づく模型眼を用いて、水晶体の厚さが薄くなり、前房深度が増加することにより周辺部の遠視化を引き起こすことを見つけました。しかし、前房深度が深くならなければ、遠視化は起こりません。

ポスターセッション:ドライアイと涙腺

Does the Phenol Red Test and the Schirmer Test Measure the Same Thing?
フェノールレッド綿糸法とシルマー試験は同じものを測定しているのか
J Peter Gierow, Linnaeus University, Sweden

シルマー試験もフェノールレッド綿糸法も涙液の産生を測定しており、ドライアイの研究においても広く追加われています。フェノールレッド綿糸法は測定時間が短く15秒で測定が可能で、不快感もほとんどありません。測定に5分間かかるシルマー試験に対するアドバンテージといえます。では、これら二つは同じものを測っているのでしょうか。両方の試験の結果を33名66眼について比較しました。フェノールレッド綿糸法を先に行い、15分間置いてから、シルマー試験を行いました。規定の測定時間(フェノールレッド綿糸法は15秒間、シルマー試験は5分間)では相関はありませんでした。しかし、フェノールレッド綿糸法を90秒間で行うと、シルマー試験との間に強い正の相関が見られました(r=0.41, p<0.05)。規定時間で測定した場合、フェノールレッド綿糸法とシルマー試験は同じものを測定しているわけではないと結論付けました。フェノールレッド綿糸法はもともと溜まっている涙液量に影響を受けやすいと考えられます。

Evaluation of the Validity of the Diagnostic Criteria for Dry Eye in Japan Using Subjective Symptoms: Osaka Study
日本でのドライアイ診断基準の有効性を自覚症状を用いて評価:Osaka Study
Norihiko Yokoi, Kyoto Prefectural University, Japan

この研究の目的は、自覚症状との比較を行い、日本におけるドライアイ診断基準を評価することです。コンピュータを使用しているオフィスワーカー561名を2006年の日本のドライアイ診断基準により診断しました。その結果、11.6%がドライアイ、54.0%がドライアイ疑い、34.4%がドライアイではないと診断されました。また、自覚症状を定量化するアンケート調査も行いました。自覚症状のスコアは、日本のドライアイ基準で診断されたドライアイとドライアイではない目で明確な違いがありました。BUTが5秒以下でドライアイ疑いと診断された群の自覚症状スコアはドライアイと診断された群とほぼ同じものでした。このことから、BUTの重要性が示されました。

Soft Steroid Topical Treatment for Moderate to Severe Dry Eye: Pulse versus Tapered Therapy
中等度から重度のドライアイに対するソフトステロイドの局所治療: パルス治療とテーパード治療の比較
Edoardo Villani, University of Milan, Italy

ステロイドの局所治療は中等度から重度のドライアイに対して処方されることがあります。この研究の目的は、0.5%ロテプレドノール(Lotemax)を使用した2つの治療方法を比較することです。
1)    パルス療法: 1日4回を2週間
2)    テーパード療法: 1日3回を1週間、1日2回を2週間、1日1回を4週間、1日おきを8週間
この研究では、5年間の期間中に0.5%ロテプレドノールを用いてパルス療法あるいはテーパード療法でドライアイを治療した90名を対象にしたレトロスペクティブな研究です。いくつかの他覚的所見および自覚的症状において、テーパード療法のほうがパルス療法よりもドライアイが改善すると結論付けました。
論文セッション:空間視力、視覚心理学、老化

Optical Quality and Subjective Judgements of Blur Under Pure Simultaneous Vision
純粋な同時視における光学的な質とぼけに対する自覚的な判断
Carlos Dorronsorro, Instituto de Optics CSIC, Spain

コンタクトレンズを用いた老視矯正方法の一つに同時視があります。つまり、遠方と近方用の光学系を同時に瞳孔内で通過させるのです。網膜像は、クリアな像と加入度数によって作られたぼけた像が重なっています。同時視による視覚的、光学的な変化がどのように起こるかを調べるため、加入度数0~3.00Dでシミュレーション像をコンピュータで作成し、5名の被験者に0(完全にぼけている)~5(完全にクリア)のスケールで見え方の質について聞きました。バイフォーカルの加入度数を0~0.50Dに変化させたとき、見え方の質は5.0から3.5まで低減しました。しかし、その後は加入度数3.0Dまで見え方の質は変化しませんでした。光学的な質を表すMTFを見ても同様の傾向が見られました。それに対して、単焦点でのぼけを見てみると、0.50Dのずれにより、視力の質は完全に低下し(見え方の質:0)、0.50Dから3.00Dの範囲は変化がありませんでした。MTFでも同様の変化の傾向がありました。したがって自覚的な見え方の質と光学的な質は、加入度数0.50Dから3.00Dの範囲で適度に良好な見え方であることを示しています。

先月のニュースレターに引き続き、ARVOの学会での発表のいくつかをまとめました。来月は、ARVO学会まとめの最終回として、最後の2日間にあったコンタクトレンズのポスターセッションを含むいくつかの発表をまとめます。また、Dr. Brien Holdenが今年の日本コンタクトレンズ学会と眼感染症学会の合同招待講演で話された内容をご紹介しようと思います。

(翻訳: 小淵輝明)

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