American Academy of Optometry学会情報(1)

Volume 9, No. 11

Summary of the American Academy of Optometry annual meeting

American Academy of Optometry(AAO)の学会報告
American Academy of Optometry(AAO)は、世界最大級のオプトメトリーの学会です。1922年に設立され、アイケアおよび視覚研究を教育プログラム、補助金、機関誌(Optometry and Vision Science)によって高めていくことを目的としています。オプトメトリーの主な研究者、教授、開業医のほとんどがAAOの会員です。全世界の47カ国から約5000人が参加していて、日本人の会員も6名います。AAOの学会は毎年秋にアメリカのどこかの都市で開催されています。今年はニューオーリンズで10/7~11に開催され、世界の主なドクターによる300時間以上の講義、勉強会、科学的発表がありました。今年の参加者数は7000人でした。AAOの学会には良い発表が多く、他のドクターとの交流もできますし、展示ホールでは最新の検査機器が見られますので、毎年AAOの学会に参加するのが楽しみです。学会の発表を十分に掲載することはできませんので、ポスター発表を1つ紹介します。
また、AAOから提供された写真を何枚か載せますので、雰囲気だけでも楽しんでください。

American Academy of Optometry(AAO)の学会の交流の様子

American Academy of Optometry(AAO)の学会の交流の様子

American Academy of Optometry(AAO)の学会の交流の様子

American Academy of Optometry(AAO)の学会の交流の様子

American Academy of Optometry(AAO)の学会で発表されたポスターの一例

ポスター発表
Omafilcon AとDelefilcon Aのin-vivoにおける脱水
Farah Panjwani, Dominik Papinski, Jill Woods, Lyndon Jones
Centre for Contact Lens Research, University of Waterloo, Canada

コンタクトレンズメーカーは優れたレンズ素材やレンズデザインを開発してきました。しかし、コンタクトレンズが乾燥することによる不快感は今でもコンタクトレンズの重大な問題です。このポスターは、CooperVisionのProclear 1dayとAlconのDailies TOTAL1の乾燥を比較した研究に関するものです。

タイトル:Omafilcon AとDelefilcon Aのin-vivoにおける脱水

Introduction

はじめに

  • Omafilcon Aは、比較的高い含水率のハイドロゲルレンズで、脱水が少ないことが示されています。
  • シリコーンハイドロゲルレンズは、in-vivoでもin-vitroでも脱水が少ないことが示されています。これは含水率が低いことが要因でしょう。
  • シリコーンハイドロゲルレンズでも、素材自体あるいはレンズ表面の含水率が高いレンズが最近開発されています。最近の研究で、レンズ表面の含水率が高い新しいシリコーンハイドロゲルレンズ (Delefilcon A)が、15分間の装用後に屈折率が上昇していることがわかりました。つまり、表面が脱水していたということです。
  • これまで、シリコーンハイドロゲルの1日使い捨てレンズとomafilcon Aのin-vivoでの脱水について比較した研究はありません。

Purpose

目的
この研究の目的は、omafilcon A (Proclear 1day, CooperVision, 含水率60%)とdelefilcon A (DAILIES TOTAL1, Alcon, 含水率33%(レンズ素材), 80%以上(レンズ表面))をソフトコンタクトレンズ装用者に12時間装用させた後のレンズの脱水を比較することです。

Methods

方法

  • この研究は、前向き、無作為化、二重盲験で、左右眼に異なるレンズを装用して行いました。
  • 被験者に、片眼にProclear 1Day (P1D)、反対眼にDAILIES TOTAL1(DT1)を装用させました。
  • 12時間の装用後、被験者を検査し、レンズをはずして、その後すぐに重量を測定しました。
  • 失われた水分の絶対量と脱水の割合(RPD, relative percent dehydration)は重量法で測定しました。計算式は図1に示しました。

Figure1:Study variable,Study visit flow chart and Dehydration calculations

Results

結果

  • 18例(女性15例、男性3例)の試験が終了し、被験者の平均年齢は27.3±10.9歳、平均球面度数は-3.63±1.98Dでした。
  • baseWC(基準の含水率)の測定値は、メーカーが公表している含水率を大きく違うことはなかった(表1)。

Table1:Mean Calculated WC from blister pack(baseWC)v,Manufactures'quoted WC

12時間装用後の脱水

  • ⊿WC (Equation 3): DT1がP1Dよりも統計学的有意に大きい。(平均3.82% vs. 1.59%, p=0.001, 図2)
  • RPD (Equation4): DT1がP1Dより統計学的有意に大きい。(平均11.50% vs. 2.58%, p<0.001, 図3)
  • DT1は、in-vivoにおける脱水のバラツキが大きい。(図2、3)
  • DT1は、12時間装用後における平均の含水率の変化がP1Dよりも大きい。(p=0.001, 図4)

Figure2,Figure3,Figure4,

Discussion and Conclusions

  • Proclear 1dayは、DAILIES TOTAL1よりも12時間の装用後における脱水(水分量の変化、相対的脱水率)が統計学的有意に少なかった。
  • この結果は、高含水率であってもハイドロゲル材料がシリコーンハイドロゲル材料よりも脱水が少ないことがありえることを示しています。

References

参照

BASIC CLINICAL TECHNIQUES – Testing color vision: The HRR test

色覚検査(HRR 検査)

色覚異常
疾患によって色覚異常が発症することもありますが、多くの場合、色覚異常は遺伝によります。先天的な色覚異常の大多数は男性で起こります。女性でも起こることはありますが、非常に稀です。興味深いことに、色覚異常の男性は母親からの遺伝なのです。
網膜には受容する色によって3 種類の錐体細胞があります。図に示したように、3 種類の錐体細胞は光の波長によって
L(Long)、M(Middle)、S(Short)というように呼ばれています。それぞれの受容する波長の範囲は広く、お互いに重なり合っています。

図5. 網膜の3 種類の錐体細胞(L、M、S)の受容する波長

先天色覚異常は1 種類の錐体細胞の異常によって起こります。たとえば、錐体細胞L が欠損していると第一色盲になります。錐体細胞L の機能が弱まっている場合、第一色弱になります。第一色盲と第一色弱は第一色覚異常と呼ばれています。同様に錐体細胞M が欠損していたり、機能が低下していたりする場合、それぞれ第二色盲、第二色弱と言い、第二色覚異常と呼ばれます。錐体細胞S が欠損していたり、機能が低下している場合、それぞれ第三色盲、第三色弱と言い、第三色覚異常と呼ばれています。最も多い先天色覚異常は第二色弱です。第一色覚異常と第二色覚異常は赤緑色覚異常と呼ばれます。第三色覚異常は非常に稀です。

色覚異常がある人々にとっては、その状態が日常であるために、色覚異常に慣れていて不都合も感じない場合が多いです。したがって、自身の色覚異常について認識していないことも多くあります。しかし、飛行機のパイロットなどの一部の職業では、正確な色の認識が必要なこともあり、就職試験のときに色覚検査を実施しています。

石原式検査
アメリカで最も多く使われている色覚検査は、14プレート石原式検査です。これは赤緑の色覚異常だけの有無を見るための簡単な検査で、色覚異常のタイプを識別したり、程度を診断したりすることはできません。また、第三色覚異常も見つけることは出来ません。試験用の冊子のそれぞれのページに、プレートがあり、色つきの背景に色のついた数字が書かれています。患者はプレートに書かれた数字を読みます。患者が赤緑色覚異常の場合、読めない数字があります。石原式検査の別のもの(図6)には24のプレートがあり、赤緑色覚異常を大まかに分類でき、程度も大まかになら診断ができます。

図6. 石原式検査のプレート

Hardy-Rand-Ritter (HRR)検査
HRR検査は新しい検査で石原式とよく似ています。しかし、以下の点でHRR検査のほうが優れています。

  • 赤緑色覚異常のそれぞれを診断できる。
  • 第三色覚異常を診断できる。
  • 色覚異常の程度を」診断できる。

これは、迅速で効果的で簡単な検査です。しかも、多くの情報をもたらします。この検査は、2つのステップで行われます。最初に、患者に6つのスクリーニング用のプレート(図7)を見せ、正常色覚、第一色覚異常、第二色覚異常、第三色覚異常を判別します。石原式検査のように、色つきの背景の中の色つきの記号を確認します。このスクリーニングをパスしたら、色覚は正常ということになります。パスしなかった場合には2つ目のステップに進みます。それは、色覚異常のタイプと程度(軽度、中等度、重度)を診断するものです。HRR検査の記録用紙(図8)は、ドクターや検査員に検査方法がわかりやすく書かれています。スクリーニングには1分程度かかります。検査を完了するまで2分以下で終わります。この検査は迅速で正確に全ての先天色覚異常を診断するものです。この検査方法を私の学校では学生たちに推奨しています。

図7. HRR検査スクリーニング用紙

図8. HRR検査記録用紙

(翻訳: 小淵輝明)

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